2024年の国内スタートアップの資金調達額は速報値で1兆891億円となったことがSTARTUP DBの調査で分かった。1兆円を超えるのは2年ぶりだが、大きな伸びに欠くことから調達環境が良くなってきているとは言えず、横ばいの状態が続いている。
また、M&Aの動きをみると、スタートアップがスタートアップを買収するケースが目立ってきている。未上場スタートアップ同士や、上場スタートアップが未上場スタートアップを買収するなど、
M&Aの活況に注目が集まっている。
2024年の年間のスタートアップ資金調達金額は速報値で1兆891億円(前年比10.6%増)となり、2年ぶりに1兆円を超える結果となった。これは新株を発行するエクイティファイナンスや融資・社債などのデットファイナンス、それに補助金やクラウドファンディングなど、複数の手法による調達の合計値となる。
また、資金調達を実施したスタートアップは速報値で2,272社(前年比11.7%減)、確定値で2,691社で、資金調達金額と同様に社数に関しても横ばいである。
国内スタートアップの資金調達環境は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げなどの影響を受けて21年末ごろに調整局面入り。FRBは24年9月に利下げに転じたが、調整局面は続いている。
一方、日銀は24年3月にマイナス金利政策を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切った。7月にはさらなる利上げを実施。25年に入ってからも1月に追加利上げを決定し、政策金利は08年10月以来、17年ぶりの高い水準となった。今後、こうした金利環境の変化が投資マインドにどの程度の影響を与えるのか注目したい。
国内のセクター別の概況をまとめてみた。グラフでは、同一企業に複数のセクターが登録されている場合があるため、各セクターの合計値は資金調達総額・社数とは一致しない。
資金調達金額はSaaSが2,981億円でトップ。2位はAIの2,686億円、3位はエネルギー・環境の2,058億円だった。
SaaSはクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRが7月にシリーズEラウンドにおいて214億円の調達(第三者割当増資およびセカンダリー取引)を実施した。
AIは生成AIの開発を手掛けるSakana AIが牽引。KDDIから出資を受けた東京大学発スタートアップのELYZAも話題となった。今後は「AI×製造業」といった日本の強みを生かしたスタートアップの活躍にも期待がかかる。
24年のスタートアップのEXIT概況はどうだったのだろうか。IPOと買収の件数を経年推移でまとめた。買収件数には合併や事業譲渡を含まない。
IPOは61件で低調な状態が続いているが、スタートアップの買収の件数は年々増えており、24年は178件(前年比32.8%増)で大幅に伸びた。
M&Aやセカンダリー取引の活発化により、IPO以外の選択肢が広がった。背景には、IPO市場の低迷や資金の流動性確保の問題などがある。
M&Aにおいては、大企業がオープンイノベーションを加速させる手段として、スタートアップを買収するケースが増えている。
また、スタートアップがスタートアップを買収するケースが目立つ。24年は96件で、20年の52件から84.6%も増えた
24年の象徴的な例としては、二酸化炭素排出量の見える化サービスなどを展開するアスエネが10月、ESG(環境・社会・企業統治)のデータ収集・分析を手掛けている東大発スタートアップのE4Gを買収。さらに12月には、API連携サービスを提供するAnyflowを相次いで買収した。
ロールアップ型M&Aが上場会社のみならず、未上場スタートアップのコーポレートアクションにも取り入れられていることは注目に値する。
STARTUP DBは、「【2024年 年間】国内スタートアップ投資動向レポート」を2025年2月13日に公表する。
国内スタートアップエコシステム全体の資金調達トレンドから、エクイティなど調達手法別の傾向、それにIPO・M&AなどのEXIT状況などを俯瞰し、数字とともに浮き彫りにしていく。
さらに独立系VC・金融系VC・CVCと事業会社など、属性別の投資動向も分析。事業の進捗を示す「シリーズ」ごとの調達状況も整理したほか、今回は引き続き、海外市場の調達動向を掲載する。様々な角度から国内エコシステムの今を切り取り、可視化した。
公開に合わせ、昨年から大変好評を頂いている解説セミナーを開催致します!
本セミナーでは、資金調達額や投資家属性別のトレンド、それに注目の大型調達やEXIT事例など独自調査の結果をグラフィックで視覚化しながら、
最先端で活躍するVCお二人にご解説を頂きます。
ディープテック領域の盛況や出口戦略の多様化(大型IPO、大型融資、M&A)など様々な動きがあった2024年。国内スタートアップエコシステムではどのような動きがあったのか。
スタートアップの"今"と"今後の展望"を「最速」で読み解き、質問もできる1時間半です。
・CVCなど、事業会社で投資担当をしている
・国内の最新スタートアップ動向を知りたい
・ファンド、投資家、産学連携など成長産業における最新動向を網羅したい
・今、勢いのあるスタートアップを見つけたい
・IPOやM&A、事業提携などの傾向を知って、自社に活用したい
開催日時:2025年2月27日(水)13:00~14:30
参加料:無料
参加方法:オンライン視聴
主催:フォースタートアップス株式会社(STARTUP DB)
※競合企業様などのご参加をお断りする場合がございます。予めご了承くださいませ。
※動画視聴方法につきましては、お申し込みいただいた方へのみご案内させていただきます。
2006年グロービス・キャピタル・パートナーズ入社、2012年同社パートナー就任、2013年最高執行責任者就任、2019年同社代表パートナーに就任。同社は、国内向け独立系ベンチャーキャピタルとして最大規模の累積1,100億円を運用。主なトラックレコードは、Visional(旧ビズリーチ)、Yappli、クリーマ、アカツキ、ブイキューブ、ライフネット生命保険、Quipper、キラメックス。主な投資担当先は、スマートニュース、アンドパッド、READYFOR、akippa、アグリメディア、FLYWHEEL、リノベる。、tebiki、セイビー、TERASS、ナレッジワークなど。2021年日本ベンチャーキャピタル協会理事就任(現任)、2024年同協会ナレッジ部会部会長就任(現任)。東京大学工学部非常勤講師(現任)。同社以前は、経営コンサルティング会社(現PwC)にて、プロジェクトマネジャーを歴任。東京大学法学部卒。
2003年にエヌ・アイ・エフベンチャーズ株式会社(現:大和企業投資株式会社)入社。主にネット系スタートアップの投資業務及びファンド組成管理業務に従事。2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。2015年より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会企画部長を兼務。その他ファンドエコシステム委員会委員長やLPリレーション部会部会長等を歴任。2023年同協会理事就任。
慶應義塾大学環境情報学部卒業、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて転職サイト「DODA」(現doda)立ち上げなどを経て、2016年に株式会社ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス株式会社)を創業、代表取締役社長に就任。2014-15年「Japan Headhunter Awards」にて「Headhunter of The Year」2年連続受賞、2016年に国内初「殿堂」入りHeadhunter認定。2019年より日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員、2020年より経団連スタートアップ委員会企画部会/スタートアップ政策タスクフォース委員に就任。2021年に公益社団法人経済同友会入会。2022年に一般社団法人関西経済同友会に入会。2023年『スタートアップで働く』(ディスカバー・トゥエンティワン)を出版。