ランキングレポート

2024年世界時価総額ランキング。グローバルのトップ企業と日本勢の差はどれくらい?

2024-02-21
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

日経平均株価の史上最高値(終値)は3万8,915円。1989年(平成元年)の年内最後の取引日「大納会」に記録されたものだ。

この年の世界時価総額ランキングを見ると、トップ50のうち32社を日本企業が占めていて、破竹の勢いを感じさせる。2024年は最高値を更新し、4万円台への突入も期待される一年となるが、企業ごとの時価総額を見ると世界までは大きな隔たりがある。2024年のトップ50にはトヨタ自動車の1社がランクインするのみだ。

日本企業と世界の差はいかにして生まれたのか。1989年と2024年を見比べていく。

「50分の32が日本勢」だった1989年

1989年の世界時価総額ランキングではNTTが1,639億ドルでトップに立っている。

政府保有株の3分の2を売却することになったNTTは1987年に上場。国民を巻き込んだ株式ブームの火付け役となり、160万円だった初値は2ヶ月ほどで318万円にまで上昇した。

2位以降は日本興業銀行。近代工業の勃興期にあたる1902年(明治35年)、長期融資の需要などを背景に誕生した金融機関だ。

そのほかにも住友銀行(3位)、富士銀行(4位)など複数の金融機関がランクインしていて、日本経済そのものの好調さを窺わせる。ちなみに、ランク上位に名を連ねる日本興業銀行、富士銀行、第一勧業銀行はいずれもみずほ銀行の前身の一つとして知られている。

自動車メーカーではトヨタ自動車が11位、日産自動車が26位。「日の丸家電」もグローバル市場で存在感を示したほか、現在はシェアを大きく失っている半導体でも高いシェアを誇っていて、日立製作所(17位)・松下電器(18位)・東芝(20位)・日本電気(NEC / 48位)がそれぞれランクインしている。

全体では50社のうち6割を超える32社を日本勢が占めている。バブル崩壊前のこの時期は、グローバル経済のなかでも日本勢が大きな存在感を放っていた時期と言える。

「マグニフィセント・セブン」際立つ存在感 生成AIで成長も

ここからは2024年1月9日時点のランキングを見ていく。

日本勢では唯一、39位にトヨタ自動車がランクインしている。2023年のランキングではトップ50に日本企業の名前は1社もなかったが、24年では復活した形になる。

円安による利益の押し上げもあり、2024年3月期の連結営業利益は4兆5,000億円を見込むなど上方修正した。集計は9日時点のため2,504億ドルとなっているが、年始からの株高もあり、1月23日にはNTT株が1987年につけた株式時価総額を上回り歴代最高を記録した(※1)。

ランキング上位は2023年同様、アメリカのメガITがほぼ独占している。特に躍進ぶりが著しいのはマイクロソフトだ。日本でも爆発的に普及したチャットGPTの開発元・OpenAIに出資しており、自社クラウド「Azure」などと組み合わせた成長戦略に高い期待が集まる。

マイクロソフトは1月13日、時価総額でアップルを抜き世界首位に立った。アップルを抜くのは2021年11月以来のことだ(※2)。

アップルも2兆8,860億ドルと集計時点では1位だった。その後株価は上昇基調にあり、時価総額3兆ドルを突破する場面もあった。同社は2月1日に最新の決算を発表し、四半期の売上高は前年同期比で2%上昇したと発表した。一方で中国大陸での売上は13%減らすなど不安材料も残す結果となっている。

アメリカ発ではテック企業の存在感が依然として高く、いわゆる「GAFAM」にテスラとNVIDIAを加えた7社は「マグニフィセント・セブン」と称される。マグニフィセント(magnificent)は「豪華な、壮大な」などを意味する英単語で、市場における7社の圧倒的な存在感を示している。

7社の中でもメタの成長ぶりが際立つ。23年時点のランキングでは4,454億ドル(11位)だったのが、24年では9,217億ドルで7位と復活ぶりを印象付けた。コロナ禍によるデジタル広告の出稿減やメタバースへの注力などで株価を下げたが、広告の復調と人員削減などが市場に評価された。2月1日に発表された23年10月〜12月決算によると、売上高は前年比25%増の401億1,100万ドル。同社にとっては初となる配当の実施も発表され、メタ株は一時、20%あまり急騰した(※3)。

時価総額を倍以上に引き上げ6位に入ったのがNVIDIAだ。同社の2024年度第3四半期決算によると、期間中の売上高は181億2,000万ドルと過去最高を記録した。

特にデータセンター向け事業は前年比279%の伸びを示していて、大規模言語モデル(解説記事)や生成AIアプリケーションの爆発的な普及が追い風となっている。アメリカのバイデン政権が2023年10月、AIに使われる半導体の対中輸出を強化したこともあり、NVIDIAも「第4四半期には著しく売り上げが落ち込む」(同社資料)と見込むが、規制対象ではない地域の成長によって相殺できると自信を覗かせている。

9位のテスラは集計後に発表された決算などが原因で市場での評価を落とした。24年1月に発表された2023年第4四半期決算によると、売上は251億6,700万ドルと前年比で3%伸びたものの、営業利益は20億6,400万ドルとマイナス47%に終わった。中国勢の台頭や値引きなどが影響した格好で、稼ぐ力が改めて問われている。

中国勢の勢い乏しく 米中対立や景気低迷が枷

2023年のランキングと比べて大きく変わったのは中国勢の存在感だ。23年では5社がランクインしていたが、24年では2社に減少した。

象徴的なのは32位からランク外に転落したアリババグループだ。ECプラットフォームなどを中核とする同社の事業は、中国国内の消費低迷と有力な競争相手の出現という課題に直面している。同社は23年春ごろにグループをECやエンタメなど部門ごとに6分割する構想を示し、それぞれが資金調達やIPOなどの成長戦略を描いていくとしていた。

その後、23年11月にはクラウド事業の分離中止や生鮮食品事業のIPO留保を発表。アメリカの対中輸出規制などが背景にあると説明され、翌日の香港株式市場では同社株の終値が前日比10%安となった(※4)。

中国勢ではほかにも、中国工商銀行と中国建設銀行がランキングから姿を消した。23位のテンセントホールディングスと29位の貴州茅台酒も時価総額を下げている。

2024年はアメリカの中央銀行が利下げに転じると見られているが、具体的な時期は見通せない。日銀のマイナス金利政策解除が近づいているとの観測もある。こうした動きのほか米中の技術覇権争いなど地政学的な要素も株価の変動要因となっていく。時価総額ランキングはこうした動きを反映しながら日々変わっていく。

参考資料:

※1...トヨタ時価総額、歴代最大 バブル期のNTT超え(共同通信 2024年1月23日)
※2...
マイクロソフト、時価総額首位に返り咲き-アップルを2年ぶりに抜く(Bloomberg 2024年1月13日)
※3...
Mark Zuckerberg made more than $28 billion this morning after Meta stock makes record surge(CNN 2024年2月2日)
※4...
中国アリババ株が10%安 クラウド分離中止で(日本経済新聞 2023年11月17日)

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