分かりやすい用語解説

ユニットエコノミクスとは?スタートアップの競争力を数値化、LTVとCACを用いた計算式や具体例を紹介【ゼロから分かる用語解説】

2023-06-29
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

「ゼロから分かる スタートアップ用語解説」は、これからスタートアップについて詳しく知りたい人たちを対象に、基礎的な内容を分かりやすくお伝えします。今回は、スタートアップの競争力を図る指標として用いられる「ユニットエコノミクス」について解説します。

この記事で分かること:
・ユニットエコノミクスとは
・LTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得単価)を用いた計算法
・ユニットエコノミクスを知ることの意味は

ユニットエコノミクスとは LTVとCACを用いた計算式も紹介

ユニットエコノミクス(Unit Economics)は直訳すれば「単位あたりの経済性」です。スタートアップの成長性や競争力を図る指標の一つとして活用されています。

突然ですが、ある企業がサブスク(定額料金制)のサービスを始めたとします。

「リリース1ヶ月で有料会員1万人を達成しました!」と言われたとき、読者の皆様はこのサービスの成長性をどのように判断するでしょうか。

もう少し情報を補足してみましょう。このサービス、収益は会員から受け取る月額料金の500円。広告宣伝には積極的で、会員一人あたりの獲得に1万円かかっていた...ということが分かったら、見え方が固まってきそうです。会員が1年8か月間サービスを継続してくれて、ようやく広告宣伝費の元が取れる計算になります。

このように「どれほどの利益を生む顧客を、どの程度のコストで獲得できているか」を知ることは重要です。ユニットエコノミクスは、そのために欠かせない指標と言えます。ユニットエコノミクスは以下の計算式から割り出せます。

LTV÷CAC

LTV(ライフ・タイム・バリュー)とは顧客生涯価値のこと。顧客1単位(一人、もしくは一法人など)が取引関係にある間、どの程度の利益をもたらしてくれるかを表す指標です。

計算方法は複数ありますが「顧客1単位あたりの単価×購買頻度×平均生存期間」などで求められます。

生存期間とは、売上が発生し始めてから解約に至るまでの時間のこと。解約率(チャーンレート)を用いることもあります。

CAC(カスタマー・アクイジション・コスト)は顧客獲得単価を意味します。顧客を獲得するために活用した広告宣伝やイベント出展費、それに顧客維持施策の費用などを全て含んだコストを新規獲得顧客数で割って求めます。

マーケティングなどの費用を100万円かけて10人の顧客を獲得できた場合、CACは10万円ということになります。このLTVをCACで割ることでユニットエコノミクスを求めます。

冒頭の事例に当てはめてみましょう。なお、会員は平均してちょうど1年間サービスを使い続けると仮定します。

LTV(500円×12か月)÷CAC(1億円÷1万人)
=LTV(6,000円)÷CAC(10,000円)
=0.6

ユニットエコノミクスは一般的に3倍以上が適切とされています。また、グロービス経営大学院は「3倍から5倍が目安」と基準を示しています。今回の事例は、やはり改善が必要な状態と言えそうです。

このように、ユニットエコノミクスを参照することで、有料会員数などの数字だけからは見えない企業の成長性を測ることが出来ます。

ユニットエコノミクスが低い場合、マーケティングが効率的に行われていないか、顧客から得られる収益が少ない、解約までの期間が短いなどの原因が考えられます。

ユニットエコノミクスの算出にあたっては割り算ではなく引き算を用いることもあります。「LTV-CAC」や、顧客1単位あたりの売上高である「ARPU(アベレージ・レベニュー・パー・ユニット)」から原価や顧客獲得費用を引いて出します。

顧客から得られる利益よりも獲得費用の方が上回る、つまり赤字の場合は注意が必要です。現行のモデルのまま事業を拡大すればするほど手元資金が急速に減っていくことになりかねません。

ユニットエコノミクスは投資家にとっても重要な指標です。アメリカの日系VC(ベンチャーキャピタル)・Sozo Venturesを立ち上げたことでも知られる中村幸一郎氏は、「スタートアップ投資のセオリー」(2022年,ダイヤモンド社)のなかで、投資対象を見極める際の基準の一つとしてユニットエコノミクスを挙げています。

同書には中村氏が現地の投資家養成機関「カウフマン・フェローズ」で得た知見が盛り込まれていますが、ユニットエコノミクスは「スタートアップの競争力を定量化するうえで最も重要な指標」と位置付けられているそうです。

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