ランキングレポート

平成最後の時価総額ランキング。日本と世界...その差を生んだ30年

2019-07-17
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

世界の時価総額ランキングというと、GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)などのアメリカのIT企業が上位に君臨するというイメージを誰もが持つはずだ。また、昨今ではアリババ、テンセントなどの中国企業の台頭も著しい。本記事では、令和が幕をあけたこのタイミングで平成の世界経済を時価総額の観点から振り返ってみたいと思う。

グローバル時価総額ランキングー平成元年と平成31年ー

平成元年と平成31年の世界時価総額ランキングは以下である。

(平成31年に関してはYahooファイナンスhttps://stocks.finance.yahoo.co.jp/、平成元年に関してはダイヤモンド社のデータhttps://diamond.jp/articles/-/177641?page=2を参照にして作成)

※22/2/22:平成元年のランキング表15位新日本製薬を新日本製鉄に修正

まず、左表を見ていただければわかるが、平成元年時点ではNTTが群を抜いて首位であり、TOP5を日本企業が独占している。上位50社中32社は日本企業がランクインしていたことがわかる。また、日本企業のうち金融機関が17社ランクインしていることは驚くべきことだ。バブル時代の日本の繁栄を象徴している。次に右表は、2019年4月時点の世界時価総額ランキングである。上位は米GAFAを含むIT企業と中国IT企業が大部分を占める結果となった。日本企業は50位以内にトヨタ1社のみのランクインだ。2つの結果から、この30年での日本企業の世界における立ち位置の大きな変化が見て取れる。また、30年前の1位NTTよりも現在の1位appleの時価総額が9倍以上になっていることから、世界的には時価総額が大幅に成長していることもわかる。

国籍・業種からみる上位50社の特徴

次に国籍・業種から見るこの30年の変遷に関してみていく。まずは国籍に関してである。

上のグラフの30年前のデータでは日本企業が32社、米企業が14社、英企業3社、独企業1社。日本とアメリカ企業が独占していることは一目瞭然である。次に現在の国籍別のデータをグラフにしたものが以下である。

※22/1/21:ランキング表とグラフにメルクの国籍をアメリカからドイツに修正

米31社に続いて、中国7社、スイス3社が続いているという結果。30年前と比べると米企業と中国企業の成長が著しいことがわかる。スイスも医療関連企業を中心に3社がランクインしている。日本を含めた他9国は、各国1社ずつ国を代表する企業がランクインするという結果であった。次に業種について見ていく。まずは1989年時点での業種別グラフである。

1989年の業種別企業数では、金融が17社で他の業種を大きく引き離す結果。また、金融17社全てが日本企業であることは、バブル当時の日本金融の影響力の大きさを示している。次にエネルギーが9社。エネルギーでも約半数の4社が日本企業であった。次に2019年の業種別企業数をみる。

2019年の業種別では、IT・通信系が14社と一番多い結果。続いて金融が10社。上位10社には、GAFAとアリババ・テンセントなどのIT・通信企業が6社ランクインしている。しかし、50社全体では、IT・通信が数としてはややリードするものの、業種に極端な偏りが生じるというデータは見られなかった。

時価総額からみる近年の注目トレンド

ここまでは、30年前と現在の定点比較をおこなってきたが、時価総額の面からみる近年の注目すべきトレンドについても整理しておく。 

①時価総額1兆ドル突破企業とは?

現時点では、1兆ドル以上の時価総額を誇る企業はないが、時価総額1兆ドルを突破した経験のある企業は過去に4社存在している。1社目は、中国の石油大手、ペトロチャイナである。2007年の上海株式市場上場時に1兆ドルを突破している。しかし、株式公開後株価の下落が続いている。上場時にほぼすべての株を中国政府が保有していたことが原因と見られる。ペトロチャイナを除くと1兆ドルを突破した企業は米3社で、2018年以降に集中している。まず、最初に突破したのはアップル。2018年8月に米企業として初めて1兆ドルを突破。2008年からの10年では、時価総額で見ると7倍に成長している。次に突破したのはアマゾン。2018年9月に時価総額1兆ドルを突破している。アマゾンの時価総額はリーマンショック以前の2006年からおよそ60倍に膨張している。最後に突破したのは、マイクロソフト。2019年4月に一時1兆ドルを突破。コンピューターの計算能力を貸し出す「Azure」や業務ソフトをネット経由で提供する「office365」の伸びが続き、収益力が高まっているのが要因のようだ。直近1年で時価総額1兆ドルを超える企業は増えてきている。時価総額は変動が激しいため、常時1兆ドルを超える企業はないのが現状である。しかし、時価総額1兆ドルという指標は、世界の覇権を握る企業にとっては基準になってくるであろう。

②アジアの時価総額における日本の立ち位置は?

アジアにおける日本市場の立ち位置も大きく変わってきている。日本の株式市場は、米国、中国本土に次ぐ世界3位の位置づけを維持してきたが、2019年4月に香港市場に抜かれ、約4年ぶりに順位が逆転。テンセントを中心としたスター企業の躍進が背景にあるようだ。個々の日本企業の時価総額は後退はしていないものも世界やアジアの成長に乗り遅れているのは事実だ。本記事では、グローバル時価総額の観点での日本の世界経済における立場の変容、現在上位を独占する米企業の状況について触れてきた。30年で金融・メーカー主導の経済から、ITを駆使した情報網が世界を掌握するようになったことは明白である。過去30年での日本企業の世界における立ち位置も大きく変わり、時価総額の観点では米中と大きな差があるのが現状だ。平成という時代は時価総額の観点では、日本企業は右肩下がりがつづいた。令和ではどのような展開が待っているのだろうか。

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