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レンティオが生み出す愛されるサービス、PMFの決め手とは?

2020-04-07
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部
PMFの決め手は、ユーザーの利便性を考え続け、初心を忘れず、堅実にサービスを磨き込むこと

使っていない部屋や車、その他あらゆる物を“シェア”する考えが広がり、シェアリングエコノミーが拡大するなか、あえて自らをシェアではなく「レンタル」と定義するサービスがある。

カメラや家電などを、最短3泊4日から借りることができるレンタルプラットフォーム「Rentio」だ。

レンタル品目は優に1,500を超えている。サービスの注目度が高い理由のひとつには“レンタルは面倒だ”という既成概念を大きく覆す、抜群のUXを誇るサービスであることが挙げられる。徹底的に使いやすいプラットフォーム作りを探求し、累計注文数は20万件を突破した。2月25日にはエクイティ・デットファイナンス合わせた総額10億円の資金調達の成功も発表。名だたる個人投資家も投資を実行するなど、一目置かれるスタートアップだ。

レンティオ株式会社代表取締役の三輪謙二朗氏に尋ねたかったのは「なぜ、愛されるサービスを作れるのか」。その答えはシンプルなものだった──。

■三輪謙二朗(みわ・けんじろう)
三輪謙二朗(みわ・けんじろう)─2008年楽天株式会社入社。モバイル推進グループにてモバイル版楽天市場の拡大に貢献後ECコンサルタントとしてキッチン日用品雑貨ジャンルグループ配属。退職後、ECベンチャー企業を経て2015年4月に株式会社カンパニー(現 レンティオ株式会社)を創業。

toBサービスをtoCに最適化するための「簡略化」と「効率化」

toBサービスをtoCに最適化するための「簡略化」と「効率化」

──レンタル、特にカメラの機材や家電など高額なものは、借りづらかったイメージがあります。その中でレンティオは、UXにこだわってレンタルのハードルを下げようとしているのかな?と思うのですがいかがでしょう。

三輪そうですね。「借りにくくて返しにくい」とされているレンタルのイメージを変えたいと思ってサービスを作り始めた背景はあります。とはいえ、そもそもカメラや家電の“toCの”レンタルサービスは、創業当時ほとんど存在しなかったんですよね。

──あったとしてもtoBやプロ向け、ということですね。

三輪そうです。例えば、プロのフォトグラファーが機材をレンタルをする場合、仕事に必要になるものだから、多少サービスの使い勝手が悪くてもあまり嫌がられなかったといいますか。

──具体的にtoCへの最適化を考える上で、変えたいと感じていた部分はどこだったのでしょう。

三輪一番は身元保証ですね。具体的には「身分証のアップロード」です。カメラや家電などのレンタルでビジネス上のリスクとなるのは盗難です。だから、身分証明書や名刺なんかをアップロードする手続きがどのサービスにも必ずあるのですが、とにかく大変なんですよ。身分証をPDFで書き出してアップロードしないといけない、とかで(笑)。

──身分証をPDFでアップロード……。

三輪もっと簡易的な手続きでレンタルできたほうが僕らもユーザーさんも幸せだなと思っていました。盗難も、企業秘密ですが別の方法で防ぐことが出来ており、Rentioの盗難率はかなり低いです。

──Rentioを使ってみると、スマホからでも簡単に注文できるのでとても便利だなと感じます。手続きがわからず戸惑うことがないですよね。

三輪あとは、カレンダー機能を取り入れたのも他のサービスから見ると大きな変化かもしれません。

──意識したことはなかったですが、たしかに便利な機能ですね。在庫のありなしもわかるし、いつまで借りようかと検討するときにも参考になりますし。

三輪既存のサービスだと、注文が完了してから「在庫がありませんでした」と言われることがあって、それはとても不便だなと思ったんです。僕の共同創業者がエンジニアなので、最初に作り込んだ機能のひとつです。

──なるほど。レンタルのビジネスモデルを変えたというよりも、借りる際のそれぞれのステップをより快適に、簡易的に、わかりやすく変えたのですね。

三輪そうです。他にも、たとえば往復送料を無料にしたり、返品方法のガイドを同梱したり、商品が届いた箱で返せるように着払い伝票とガムテープをセットにしてお届けしたり。おかげで多くのレビューで「返却しやすかった」の声をいただきます。

「試したい」よりも大きかった「ワンショット」のニーズ

──toCのレンタルサービスが世の中に浸透していなかったと仰っていましたが、toCサービスとしてのマーケットフィットはどのように達成したのでしょう。

三輪今でこそ1,500〜2,000種類のアイテム数を取り扱っていることが強みになりましたが、創業当初はアイテム数は少なく、どういうジャンルが良いのかすら全くわからなかったですね。みんながレンタルしたいものってなんだろうと考えて、「いきなり買うほどではないけれど、試しに使いたいものかな」と思いコーヒーメーカー、ホームベーカリー、360°カメラなどを扱ったんです。

──たしかに、使ってみたいですが、「即購入したい」とまでは思わないですね。実際はどうでしたか?

三輪360°カメラはそこそこにレンタルいただいたのですが、ホームベーカリーやコーヒーメーカーは全くニーズがありませんでした……(笑)。その代わりにニーズがあったのが、インスタントカメラの『チェキ』でした。チェキのレンタルのみで月商が30万円くらいになったところで、これはカメラレンタルの需要があるなと気がつき、家電からカメラ中心に取り扱うアイテムのラインナップを大きく変えました。

──意外ですね。チェキって家電と比較すると割と安価ですよね。「レンタルしよう」と思うほどでもないように思うのですが。

三輪レンタル事業を始めて知ったのですが「試したい」のニーズよりも「ワンショットで使いたい」のニーズのほうが当時は大きかったんです。チェキの場合、すでに使い方も知っているし、楽しさも知っているけれど、常に手元に置いておきたいと思うことは少ないようなんですよね。イベントごとや旅行のときだけ使いたいと思う方が多かったんです。それこそ、「友人の結婚式で複数人で利用したいが、その後に誰かが所有する必要がないレンタルがよい」という声もありました。

──ありそうですね。とはいえ、安価な製品だと売上としては厳しいものがありそうです。

三輪そうなんです。チェキはRentioだと2,000円くらいで借りられるのですが、負担している送料の1,000円のことを考えると、実は手元には半分しか残らない。だから、複数個レンタルしてもらう方法を考えたり。

「試したい」よりも大きかった「ワンショット」のニーズ

──回転率への意識も強く持たれていたのかなと思うのですがいかがですか?

三輪強くこだわっていますね。レンタル事業なので、購入金額を上回るレンタル金額が生まれて、やっと収益的にはプラスですから。回転率を上げるためには、無駄な在庫を購入しないことを徹底しました。Rentioでは、在庫を増やすときは必ず「ひとつずつ」なんです。在庫が無くなってもなお注文がきたら、そのときにまた1台購入する。

──それは意外です。てっきりまとめて数台ずつ購入しているのかと思っていました。

三輪いえいえ。その他にも、新しいモデルを仕入れたら型落ち製品は価格を下げたり、露出場所を変えてなるべく多くユーザーさんの目に触れるようにしたりと工夫を行なっています。現在、Rentioの月の回転率は約90%と高い水準を保っているのですが、その理由としては、こういった工夫を自動化して効率的に行なっていることが挙げられます。

──なるほど。加えて、安価な製品でもレンタルしようと思う方が増えたのは、時代の大きな変化なのかもしれないですね。

三輪市場そのものは、メルカリさんのおかげで随分と大きくなっていると思います。中古品の抵抗感がなくなっているのもそうですし「送る」行為そのものへの抵抗も少なくなってきているのではないかなと。昔であれば「宅配便ってどう送るの?」なんて方が多かったと思うんです。受け取りやすく、返しやすい世の中にサービスを提供できたことが、RentioのPMFのキーなのではないかなと思っています。

──そういった、市場の変化や一人ひとりの声をキャッチアップするための取り組みで意識されていることはありましたか?

三輪立ち上げ初期の頃は、とにかくユーザーさんの声を直接聞いていましたね。オフィスの近くにお住まいの方からレンタルの注文があったら、直接ご自宅に伺って話を聞いたこともありました(笑)。また、2年くらい前までは僕自身CSとしてチャットやメールなどの対応にも関わっていました。

あえてターゲットを「初心者」からブラさない理由

あえてターゲットを「初心者」からブラさない理由

──3泊4日のレンタルから始まったサービスも、今では月額制のレンタルだったり、追加料金を支払いそのまま購入ができたりと、サービスの幅がどんどん広がっていますよね。

三輪僕は前職のときからレンタル事業をやりたい、と思ってきました。モノを使いたいときに「買う」か「我慢する」しか選択肢がないなんて寂しいなと思っていたからです。試したいニーズもあるし、ワンショットのニーズもあるし、それらを叶えられる世の中を作りたい。本当に良いものが、必要なユーザーさんに届くような社会ってとても良いと思うんですよね。

──メーカーや家電量販店がレンタル事業を始める未来が訪れることもあるかなと思うのですが、そこはどう捉えているのでしょう。

三輪たしかに今後はD2Cの流れもあり、よりメーカーは直接消費者とつながるようになるでしょう。ただ、レンティオのオペレーションを始めとするtoCに特化したサービスの強みはまだまだ活きると思っています。オペレーションに関しては、しっかりと磨き込んできたので他社に追い抜かされるイメージはないですね。むしろ、メーカーがレンタルを考えたときにレンティオがハブのような存在になれたらなと。ユーザーさんの声を正しくすくいあげてメーカーに届けることができたら、僕らの価値は強まるように思います。たとえば、Rentioの取り扱いアイテムで面白い統計が取れているものがあります。最近人気の自動調理鍋なのですが、「日頃からよく料理をする方」は、シャープ製の自動調理鍋に対して良い評価を下し、「あまり料理をしない方」はティファール製のものに対して良い評価を下した、という傾向が見られました。そういったデータが取れると、メーカーとしては広告の打ち方も変わる。要するに、マーケティングの目線でのお手伝いができるんですよね。

──面白いですね。家電量販店の参入についてはいかがでしょう?

三輪そうですね。コメントが難しいところですが……まず本業の「販売」を食い合う形の事業になるのでそもそも参入が難しい気がしています。家電量販店がレンタルを始めること自体は有意義だとは思うのですが。「Rentioでレンタルしてから家電量販店で購入したら〇〇」みたいなキャンペーンなんかができたら良いのかもしれないですね。

──それは面白そうですね。

三輪ですよね。僕らは「電源の入れ方すらわからない」みたいな方に身近に感じてもらえるサービスを作り続けていたいんです。「わかりやすかった」「使いやすい」そんな風に言っていただけることが励みだし、チーム全員が同じ想いを持って事業と向き合えているので。数字で測りづらい口コミなど情緒的部分の重要度も増している世の中だからこそ、徹底して良いサービスを作っていたい。ずっとそう思っています。

なぜ、愛されるサービスをつくれるのか?

PMFやグロースのティップスの根底にあるもの

インタビューの最後に「これから起業家になる人に向けたメッセージってありますか?」と尋ねてみた。すると、三輪氏は「初めて聞かれました。なんだろう」と、少し困った表情を浮かべる。小さな沈黙の後に出てきた言葉は、こうだった。

「起業は、楽しいです。僕、初めて注文をもらった日のことをずっと覚えているんですよ。本当に嬉しかったなあって。あの楽しさは忘れられないし、あれがあるから続けようっていつも思うんですよね」

心の底から事業が好きで、心の底から“良い”を追求するからこそ生まれる言葉なのだろうと感じた。「なぜ、愛されるサービスを作れるのか」問いへの答えは、たぶんとても単純だ。誰よりもユーザーを、サービスを、愛しているから。起業家としての素直な愛情を三輪氏の姿勢から受け取ったような気がした。

執筆:鈴木詩乃取材・編集:BrightLogg,inc.撮影:戸谷信博

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