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日本の未来と、国内のスタートアップに必要な官民連携のあり方を考える

2019-09-12
STARTUPS JOURNAL編集部
Editor
STARTUPS JOURNAL編集部
日本の未来と、国内のスタートアップに必要な官民連携のあり方を考える

日本のスタートアップエコシステムが醸成し、進化するためにはどのように官民が連携していくことが望ましいのか。

「Microsoft Innovation Lab 2019」で行われたセッションを元に官民連携の今後の姿を考えていく。

海外では当たり前となりつつある「GovTech」の取り組み

■西村賢(にしむら・けん) ーCoral Capital Partner & Chief Editor
■西村賢(にしむら・けん)ーCoral Capital Partner & Chief Editor
■村田祐介(むらた・ゆうすけ) ーインキュベイトファンド 代表パートナー
村田祐介(むらた・ゆうすけ)インキュベイトファンド 代表パートナー
■石井大地(いしい・だいち) ー株式会社グラファー 代表取締役 CEO
石井大地(いしい・だいち)株式会社グラファー 代表取締役 CEO

西村 「国内でも『J-Startup』の動きが加速しているように、今は国内外共に官民連携の動きが非常に活発になっていると感じています。先日、僕がCoral Capitalの社内で発表した資料があるのですが、そこでも海外の事例を参考に官民連携の動きを話したんです。たとえば、エストニアはいわゆる非常に“GovTech”の動きが盛んな国。国内の治安管理のマーケットがすごく大きいんです。イグジットした例もあるくらいですしね。 ほかにも、国外に目を向けるとGovTechに取り組むスタートアップは非常に多いように思います。たとえば、情報の利活用目指した『Zencity』や交通渋滞の解消を掲げる『Optibus』などが注目を集めていますね」

石井 「日本の場合は、交通系企業各社の取り組みに留まってしまうため、一貫して課題を解消できるスタートアップが存在しないのも事実ですね。あとは、アメリカで誕生した、銃声を聞き分けて犯罪やテロ防止に務める『ShotSpotter』はIPOを成し遂げています。 僕らも、スタートアップとして行政手続きの効率化を図るサービスを提供しているので領域としてはGovTechに入ります。国内だと、ちょっとした書類を集めるのも大変なので、その領域でソリューションが提供できればと思い事業をはじめました」

西村グラファーのユーザー層はどういった方が多いんですか?」

石井 「多いのは、海外在住の日本人の方でしょうか。現在だと、ヨーロッパ、アジア、北米など18カ国からの依頼がありますね。国外に在住すると、書類手続が本当に面倒なので……。あとは、役所に行くのが恥ずかしいことが理由で、独身証明書を欲しいと依頼をいただくこともあります」

デジタルトランスフォーメーションが浸透しない日本

西村 「デジタル化に関するサービスの普及の早さや認識の深さで見ると、日本はまだまだ遅れているなと感じざるを得ませんね」 石井 「アメリカには、データを活用するスタートアップが多いですからね。日本は、そもそも業務をデジタル化して行う文化がまだ浸透していないですからね。海外と比較すると、2周ほどは遅れているので、まだまだデジタル化を追い求めるフェーズではないのかなと」

西村 「デジタル化に関するサービスの普及の早さや認識の深さで見ると、日本はまだまだ遅れているなと感じざるを得ませんね」

石井 「アメリカには、データを活用するスタートアップが多いですからね。日本は、そもそも業務をデジタル化して行う文化がまだ浸透していないですからね。海外と比較すると、2周ほどは遅れているので、まだまだデジタル化を追い求めるフェーズではないのかなと」

村田 「根本的に、社会の仕組みが違いますからね。日本の場合、官僚はずっと官僚のキャリアを歩むわけですが、アメリカは起業家が官僚になることもある。官民のリテラシーの差が生まれにくいので、流動性があるのも納得できます」

西村 「まだまだ国内だと、書類での管理が当たり前ですからね。課題が顕在化していない印象もあります」

石井 「その点、エストニアは最先端ですよね。国内の人口が少ないのが、先進的である大きな理由としては挙げられると思います」

村田 「それに、比較的新しい国なので、銀行口座がネットバンクに割り当られているんです。国民一人ひとりもID管理していたり。そういったことが当たり前に行われているので、日本のような懸念が生まれにくいのだと思います。まあ、国ごとに、どの取り組みから行うのかと優先順位も異なりますしね」

西村 「日本だと、それはマイナンバーの普及で実現できないんですかね?」

石井 「複雑なところですよね。マイナンバー自体は国民に振られた番号ですが、マイナンバーカードは電子証明書の役割を果たすカードってだけで。ただ、それも普及率は10数%なので、活用には遠い状態です。 台湾だと、カードの普及はすごくうまくいったみたいですね。身分証になるようICカードを発行して、全国民に配布したそうです。発行費用は160億円。一方、日本は1兆円かけて、普及のための施策を打っています」

西村 「日本でも、普及を任意にするのではなく、法律で制定してしまったら良いのにとも思いますけれどね」

石井 「法整備と日本人のリテラシーと、2点の懸念がありますね」

西村 「後者に関しては、それこそメディアが正しい情報を伝えるのが先決だと思いますが」

石井 「まあ、慎重になるのも無理もないのかな、と」

風向きが変わり始めた今、官民連携の必要性が広まりつつある

風向きが変わり始めた今、官民連携の必要性が広まりつつある

西村 「規制がそもそも存在しない領域でのビジネスだと、グレーゾーンを狙っていくのかと議論されることもありますが、その点でなにか感じることはありますか?」

村田 「VC界隈でも先日法改正があって議論を呼んだんですが、シンプルに言うと、途中で法を使って邪魔しないでほしいと感じることがありますね。外為法の改正によって、キャッシュアウト寸前のスタートアップへの投資が困難になることが懸念されているんです。 政府とのコミュニケーションをもっと図っていかなければと思うところでもありますが、もう少し提言してルールを変えることに寛容である国でいたいと感じることが多いです」

西村 「たしかに、アメリカの例を出すと、経済合理性の観点で指摘があれば随時声を上げることはできますしね」

村田 「日本は、スタートアップの歴史を考えても、まだまだイノベーションを興すための法律がありません。だから、VCとしてもキーマンとなる省庁の方とは日々コミュニケーションを取っていますし。今後の未来で、よりコミュニケーションの総量やなめらかさに磨きがかかればと思っていますね」

西村 「ただ、最近では、少しずつスタートアップに向き合う自治体の姿も見られているような印象も受けています。風向き自体は若干変わっているのでしょうか」

石井 「そうですね。2019年に入ってからは、随分と風向きが変わったと感じるようになりました。自治体に伺っても、スタートアップを知らない方がほとんどいないんですよね。『GovTechサミット』が開催されているように、世の中の知名度も少しずつ上昇しているのではないかなと思います」

西村 「それは、効率化に対する意識が上がってきたことの証なのでしょうか」

石井 「それしかないのだと思います。今、自治体では職員数が減っている現状があって、一人あたりの事務負担がどんどん増えているので。なんとかして効率化しなければと考える雰囲気ができているのでしょうね」

微修正で国は変わらない

微修正で国は変わらない

セッションの最後には、IT・科学技術担当大臣 平井氏が登場。日本のスタートアップに期待する未来や今後の行政の取り組みについて語った。

平井氏 「日本のスタートアップは、これからより成長を遂げていきます。技術力や人材の厚さなど、高いポテンシャルを秘めているからです。日本に眠るその能力を活かしきれるかどうかは、国の政策が鍵だと考えています。 ですから、まずはスタートアップと官民との連携を強固なものとしていかなければなりません。世の中にはスタートアップカフェなるものが増えていますが、まだまだ活用しきれていないのも事実。有機的につながりを作るための方策を考え、実行していく必要があるでしょう。 今、日本では先の5年間で20社のユニコーンを生み出すことを目標に掲げています。世界中、ワルシャワ、リスボン、テルアビブ、マドリッド、パリ、サンパウロ、メデジンなどには数多くのスタートアップが存在します。日本にもスタートアップが増えているはずなのに、まだまだ世界と戦える企業にはなりきれていません。 解決策のひとつには『社内言語を変える』があるのではと考えています。たとえば、フランス語、たとえば、英語。日本だからと日本語ばかりを用いるのではなく、英語を標準として用いるようにするだけでも、スタートアップの成長度合いは大きく変わってくるのではないかなと思います。 日本は、これからの未来で、高齢化と人口減少が同時にかつ確実に訪れる国です。大変だと各国からは同情されますが、むしろ今こそビジネスチャンスだと思うのです。新しいソリューションを提案できたら、世界中にもそのノウハウを伝えられるのですから。我々はそんな未来に向けて『ムーンショット型研究開発事業』を立ち上げています。解決するべき社会課題に対しての解決策を公募し、予算を投資し、プロジェクトとして進める事業です。 できることを考えるのではなく、あるべき社会を想像したあとに、必要な技術を洗い出し挑戦しなければ、未来の日本を変えることはできません。失敗を恐れることなく、まずは挑戦することから始めていこうと考えたのです。仮にその挑戦が外れたとしても、チャレンジから得た学びは次に必ず活きますから。 微調整だけで国は変わりません。ぜひ、役人も民間も、枠に囚われることなく新しいチャレンジを行なっていきましょう」

まとめ

・GovTechと呼ばれる、行政×テクノロジーの取り組みが海外では浸透している

・日本のデジタル化における課題には、国民の認識と国の戦略との2点が挙げられる

・2019年に入ってから、自治体でもデジタルトランスフォーメーションの必要性が理解され始めている

・日本全体を上げて、今後はスタートアップ支援や新産業の創出に力を入れていく

執筆:鈴木しの 編集:BrightLogg,inc. 撮影:戸谷信博

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