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Born Globalなスタートアップへ - グローバルVC5社によるリバースピッチ

2024-12-18
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部

Born Globalなスタートアップへ - グローバルVC5社によるリバースピッチ

社会課題の解決が新たな事業機会として注目を集めているなか、SMBCグループは現中期経営計画にて社会的価値の創造を基本方針の一つとして掲げており、この4月より、社会的価値と経済的価値を両立する施策として“インパクト投資”をスタートさせた。

11月14日に渋谷ヒカリエで開催された国内外のスタートアップとエコシステムビルダーが交わる場である「GRIC2024」で、SMBCグループは、日本のスタートアップとグローバル投資家をつなぐ架け橋として、リバースピッチセッションを企画。世界の5つの有力VCが登壇し、それぞれの投資戦略や支援体制をアピールした。

三井住友銀行の谷津もゑり氏はイベント冒頭で、「日本は多くの社会課題に直面する国として知られていますが、そこには新たなビジネスチャンスがあります。魅力的な技術やサービスを持つスタートアップが、社会的・環境的インパクトの創出を目指す動きが加速しています」と、日本のスタートアップへの期待と可能性を語った。

株式会社三井住友銀行 社会的価値創造推進部 事業企画グループ 谷津もゑり氏

谷津氏は、「比較的小規模な国内市場に目が向きがちで、最初からグローバル展開を目指すケースが少ない」と日本のスタートアップの課題を提起する一方で、海外の投資家の間では企業価値を評価する上で“インパクト”を重視する傾向が強まっていると話す。

SMBCグループは日本のスタートアップのグローバル化を支援するのみならず、創業当初からグローバル市場への展開を目指す、“Born Global”思考を持ったスタートアップの醸成に貢献したいと強調した。

Eurazeo - 「日本発の気候テックで、世界を変えよう」


Eurazeo Operating Partner Julien Mialaret氏

「日本の初期段階のテクノロジー企業には、特に気候分野で大きな可能性がある」

パリを本拠とするEurazeoのJulien Mialaret氏は、力強く語った。同社はすでに気候テック分野で複数の成功事例を生み出しており、その一つが自動運転EVモビリティのWeRideだ。「IPO時の時価総額は42億ドル。気候変動対策技術で、大きな経済的成功を収めることは十分可能です」と、既存テクノロジーの発展の可能性を強調した。

注力している気候テック分野は、電力、建築環境の脱炭素化、モビリティ・ロジスティクス、そして産業部門の大きく4つの領域に分かれる。特に注目したいのは、投資先企業と既存企業のマッチングにも積極的な点だ。例えば、バッテリーシステムを手がけるFCISと三井物産の協業を実現させている。

今年、東京オフィスを開設し日本のディープテック企業への投資を本格化させるという。シリーズAラウンドで100万〜1000万ドル規模の投資にも意欲的だ。「スタートアップの技術と大企業のリソースを組み合わせることで、新規事業の立ち上げを加速できる」—— その言葉からは、日本のスタートアップを単なる投資先としてではなく、新しい産業を共に創造するパートナーとして見ていることが伝わってきた。

Indogen Capital - 「東南アジアで、次のユニコーンを」


Indogen Capital Managing Partner Chandra Firmanto氏

「日本企業の東南アジア展開を、全面的にサポートしたい」

インドネシアを拠点とするIndogen CapitalのChandra Firmanto氏は、熱を帯びた表情でそう話した。同社はこれまでに38社に投資し、シンガポール取引所(SGX)やインドネシア取引所(IDX)でのIPOなど、5件の成功EXIT事例を生み出してきている。

実際、フィリピンのフィンテック企業を支援してインドネシア進出を実現し、最終的にIDXへの上場も果たした実績を持っており、現在は、デジタルバンキングやセキュリティ、決済、消費者向けロイヤリティプログラムなど、金融領域を中心としたスタートアップエコシステムの構築にも注力している。

「日本の優れた技術やサービスと、急成長する東南アジア市場。この組み合わせには大きな可能性があります。特にフィンテックや持続可能なインフラ、教育、ヘルスケアといった分野で、社会的インパクトの大きなビジネスが生まれると確信しています」

13億人を超える東南アジア市場。その巨大な可能性に挑戦する日本のスタートアップを、現地に精通したパートナーとして支える—— その姿勢は、グローバル展開を考える起業家にとって、心強い味方となりそうだ。

Blitzscaling Ventures - 「日本のAI技術を、世界の舞台へ」


Blitzscaling Ventures General Partner Chris Yeh氏

「日本の起業家は非常に賢く勤勉です。その製品をぜひ世界に広げてほしい」

LinkedInの共同創業者として知られるリード・ホフマン氏が顧問を務めるBlitzscaling Ventures。そのパートナーであるChris Yeh氏は、日本のスタートアップへの期待を隠さない。同社は初期段階のAIスタートアップに100万ドル規模の投資を行い、グローバル市場での急成長を支援しているが、特に、日本ならではのアプローチに注目しているという。

「日本は唯一の日本語圏。その特性から生まれる独自のAIソリューションに、大きな可能性を感じています。例えば、Sakana AIのような、日本発の革新的なアプローチを探しているのです」

インパクトの大きさを見極めるために、同社は独自の「Blitzscalingスコアカード」を活用。数百もの案件の中から、真に大きな市場を獲得できる可能性を持つスタートアップを見出し、OpenAIへの投資やMicrosoftの取締役も務めるリード・ホフマン氏の知見も活かしながら、支援を行っていく方針だ。日本発のAIスタートアップが、ローカルプレイヤーではなく、グローバル市場で勝負できる実力を備えているという期待の証でもある。

Seed Healthcare, LLC - 「予防医療で、世界の健康課題を解決する」


Seed Healthcare, LLC President & CEO Todd Perman氏

「もはや、心臓発作で命を落とす人がいてはならない。がんの発見が遅れて手遅れになることも、あってはならない。そのための技術は、すでにあるのですから」

米国のヘルスケアVC、Seed Healthcare, LLCのTodd Perman氏は、高齢化、医療費の高騰、人材不足、慢性疾患の増加、メンタルヘルスの課題、そしてテクノロジー統合の問題について、「これらの課題は、一見すると日本特有の問題のように思えるかもしれません。しかし、実はこれらすべてが世界共通の課題なのです」と、力強く語る。

同社の強みは米国最大級の医療機関ネットワークで、特に注目しているのは、疾病予防と早期発見の領域だ。例えば、同社が投資したPOCT機器は冷蔵庫サイズの装置でありながら、従来は大規模な検査室でしかできなかった検査を30分で実施可能にした。インパクトの評価方法も明確で、国連のSDGsに基づく指標を用いて影響を測定している。また各国の医療制度の違いという課題に対しても、支払者システムを理解することで現実的なアプローチを持っているという。

医療テクノロジーの社会実装には、規制対応や市場特性の理解など、複雑な要素が絡むが、だからこそ、現場を知り尽くしたパートナーの存在が重要になる。彼らの提案は、そんな医療系スタートアップにとって、心強い選択肢となりそうだ。

Synapses Ventures Capital Fund - 「インドから世界へ、技術の架け橋を」


Synapses Venture Capital Fund Co-Founder & Managing Partner Ruchira Shukla氏

「気候変動も、健康課題も、もはや一国では解決できない。だからこそ、解決策も国境を越えていくべきです」

インドを拠点とするSynapses Ventures Capital FundのRuchira Shukla氏が特に注目するのは、科学技術をベースにしたハードウェアとソフトウェアの組み合わせによるソリューションで、「多くの資金が再生可能エネルギーの設備投資や電気自動車の製造に向かっていますが、私たちが求めているのは、もっと根本的なイノベーションです」と主張した。

具体的には、エネルギー転換技術、建築環境の脱炭素化、新素材開発、サーキュラーエコノミー、気候変動に強い農業システムなどが投資対象となる。また「地球温暖化は、病原体と人間の相互作用を変化させ、新たな形の疾病を引き起こす可能性があります。だからこそ、医療技術、ゲノミクス、ヘルスケアAIへの投資も重要なのです」と、健康分野にも強い関心を示した。

投資アプローチとして「私たちは、単なる資金提供者ではありません。創業者と共に市場のリーダーを育てていく、共同建設者としての役割を担いたい」と語る彼らの視線は、すでに日本市場にも向けられている。JETROやJICA等との協力関係を築き、日本のイノベーション・エコシステムとの架け橋となることを目指しているという。

VC5社の話から、日本のスタートアップによるインパクトの創出は、もはや世界的な潮流であり、現実的な成長戦略であることが見えてきた。彼らは、確かな事業機会としてこの分野を捉え、具体的な支援策と豊富なネットワークを用意している。

気候変動対策、ヘルスケア、AIなど、日本のスタートアップが持つ技術やアイデアは、もしかしたら、すでに世界が待ち望んでいるソリューションかもしれない。社会課題の解決と事業成長。その両立への挑戦は、今まさに始まろうとしている。

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