ランキングレポート

2023年に実施されたスタートアップの大型調達一覧。「ディープテック」に投資マネー集まり、デット性調達も盛ん

2024-02-07
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

2023年の1年間にスタートアップが調達した資金は速報値で9,037億2,300万円だった。

マクロ経済環境の影響を一定程度受けた形で、前年比でのマイナスは避けられない勢いにある。一方で、市況が冷え込むなかにおいても大型調達に成功した事例は複数発表された。

STARTUP DBでは独自調査から、2023年の年間を通じた資金調達ランキングを作成した。

1位は大型リチウムイオン電池の開発・製造などを手掛けるエリーパワーの250億円。調達先は自動車大手・スズキだ。100億円を第三者割当増資で、150億円を転換社債型新株予約権付社債でそれぞれ確保する。

エリーパワーは2012年もスズキから10億円を調達していて、同社と技術交流を続けてきた。スズキは今回の出資を通じて株式21.59%を保有する筆頭株主となる。両社は業務提携契約を締結し、モビリティに搭載可能なリチウムイオン電池の共同開発に着手するという。スズキとしては、再エネ活用によるカーボンニュートラル社会の実現が念頭にある。

2位は230億円を調達したTelexistenceだ。人工知能を搭載した遠隔操作ロボット「TX SCARA」の開発などを手掛けていて、コンビニのバックヤードで行われる飲料の補充業務などを担っている。店舗の労働環境や採算性の向上などが期待できるという。

投資家には、ソフトバンクグループ、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループのFoxconn(フォックスコン)、グロービス・キャピタル・パートナーズなどが名を連ねた。ソフトバンクロボティクスグループとは戦略的事業提携に合意した。

3位は210億円を調達したFRDジャパン。バクテリアを活用した高度濾過技術を持ち、天然海水を使わずに陸上で魚が養殖できる「閉鎖循環式陸上養殖」を展開している。

これまで実証実験プラントでサーモントラウトの養殖を続けてきたが、調達を契機に千葉県富津市での商業プラント建設に踏み切る。このプラントは2026年操業開始・27年初出荷予定で、年間3,500トンのサーモントラウトを生産・販売することを目指している。

100億円を超える調達を実施したのは13社。2022年(11社)と比べて2社増加した。

宇宙、核融合...ディープテックに資金集まる デット性調達も盛ん

エリーパワーや4位のクリーンエナジーコネクト、それに12位のVPP Japanなど、脱炭素関連の事業を手がけるスタートアップが目立つ。

「ディープテック」と呼ばれる研究開発型のスタートアップの名前も多い。アストロスケールホールディングス(7位)とアクセルスペースホールディングス(20位)の2社は宇宙関連の事業に取り組む。こうしたスタートアップは事業成長と同時に研究開発を続けていくため、必要とする資金が多くなることも背景にありそうだ。

夢のエネルギーとも称される核融合発電領域の研究開発型スタートアップも相次いで資金調達を実施した。11位の京都フュージョニアリングのほか、「磁場閉じ込め方式」による核融合エネルギーの実現を目指すHelical Fusionが8億円を、「レーザー核融合」のEX-Fusionが18億円をそれぞれ調達した。Helical FusionとEX-Fusionはいずれもシードラウンドの調達だった。

ランクイン20社のうち半分にあたる10社が融資などのデットファイナンス(用語解説)を組み合わせて調達した。デットファイナンスは原則、返済義務が生じるが、株式の希薄化(ダイリューション/用語解説)がないという利点がある。

スキマバイトアプリを展開するタイミーは、2022年の183億円に続いて23年も130億円を全額デットファイナンスで調達。無担保・無保証かつ年利1.0%未満という条件は大企業並みで、スタートアップが勝ち取るのは異例だと言える。

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