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「合成生物スタートアップ」Logomixが最優秀賞に輝く。「次に繋がるのかと心配になることも...」喜び語る【GRIC PITCH】

2023-11-16
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部

「大きな事業成長に挑むスタートアップと世界の架け橋になる」を目指すピッチコンテスト「GRIC PITCH」が2023年11月16日、「成長産業カンファレンス 2023」内で開催された。最優秀賞にあたるGRAND AWARDには、ゲノム大規模構築技術「Geno-Writing」を展開するLogomixが選ばれた。

GRIC PITCHに登壇したスタートアップは31社。「GREEN」「HEALTHCARE & WELLNESS」「NEW LIFESTYLE」「UPRISING DIGITAL」の4つのテーマに分かれ、事業に込めた理念や成長可能性をアピールした。100人超が審査員を務め、各テーマごとの受賞企業を選出。その中からさらに最優秀賞を決定した。受賞企業やピッチ内容などを紹介する。

THEME 1 : GREEN

対象分野:#CleanEnergy #CarbonNeutral #RenewableEnergy #NewEnergy #EnergyManagement #ElectricityStorage #WasteManagement #Water #Environment #FoodTech #Agri-tech

【テーマ賞】サグリ

GREENのテーマ賞は岐阜大学発スタートアップのサグリ。高解像度衛星とAIを活用し、農作物の生育状況や土壌の状態を見える化する。農家は肥料の過剰な使用を防ぐことができ、生産コストや温室効果ガスの排出量を削減できる。ピッチに立った坪井俊輔・代表取締役CEOは「2割の肥料費削減に成功した農家もすでに出ている」と効果を強調する。

国内でのシェア拡大を図る一方で、インドやタイ、インドネシアでも事業を展開する。坪井CEOは今後の構想について「日本の小さな農地用に展開した技術は、アジアやアフリカといった発展途上国にも活かせる」と紹介した。

サグリの坪井俊輔・代表取締役CEO

THEME 1 : GREENのスポンサー賞および登壇企業は以下の通り。

サステナブル・ラボ|非財務・サステナビリティデータ開示・分析支援ツール「TERRAST for Enterprise」

【三井不動産株式会社賞】フェイガー|農業由来カーボンクレジット

アルガルバイオ|藻類開発プラットフォーム

インターホールディングス|真空パックを使ったフードロスとCO2の削減

【東急不動産ホールディングス株式会社賞】AGRIST|野菜の収穫ロボットやソフトウェアの開発

SIRC|既設の電線に工事無しで後付けできる有効電力計測「SIRC IoT電力センサユニット」

フォレストエナジー|エネルギー生産の副産物「バイオ炭」の炭素回収・貯留(CCS)への活用

THEME 2 : HEALTHCARE & WELLNESS

対象分野:#DrugDevelopment #Biotechnology #DigitalHealthcare #PrecisionMedicine #MedicalDevices #RemoteMedicine #Wellness #Wellbeing #Beauty #QOLImprovement #MentalHealthcare #Nursing Care

【テーマ賞】Logomix

HEALTHCARE&WELLNESSのテーマ賞は、ゲノム大規模構築技術「Geno-Writing」を展開するLogomix。

Logomixはバクテリア、酵母、動物培養細胞、ヒト幹細胞など様々な生物種の細胞や細胞システムを機能改変する「合成生物スタートアップ」。バイオ・医療分野で複数の起業経験がある石倉大樹・CEOと、25年以上にわたりゲノムエンジニアリングを研究してきた相澤康則・CSO(Chief Scientific Officer)による共同創業だ。

同社が展開するGeno-Writingは、大規模なゲノム改変を可能にする技術だ。ビールやパンの製造に用いられる酵母などにも応用でき、食品大手・味の素とは「カーボンニュートラルの実現に貢献するサステナブルなアミノ酸製法の共同開発を進めている」(石倉CEO)という。

同社はゲノムエンジニアリングの研究開発に注力し、パートナー企業との提携を通じ技術の社会実装を進めていきたいとする。石倉CEOは「医療やエネルギー、食品・農業など幅広い領域に展開していく予定だ」と展望を語った。

Logomixの石倉大樹・CEO

THEME 2 : HEALTHCARE & WELLNESSのスポンサー賞および登壇企業は以下の通り。

セルファイバ|細胞を工学の領域で活用し、地球規模の課題を解決

【A.T.カーニー株式会社賞】Medii|医師専用オンライン専門医相談サービス「E-コンサル」

セルージョン|iPS細胞による角膜内皮代替細胞の大量培養

【株式会社ヤマシタ賞】【ボッシュ株式会社賞】AIメディカルサービス|内視鏡画像診断支援AI

fermata|国内外の最新フェムテック製品の販売

Oh my teeth|歯科矯正D2Cブランド「Oh my teeth」

Logomix|ゲノム大規模構築技術「Geno-Writing」

SyntheticGestalt|新薬や新酵素発見のための機械学習モデルの開発

THEME 3 : NEW LIFESTYLE

対象分野:#IoT #AutomatedDriving #Mobility #Robotics #SmartCity #Sharing #Logistics #Delivery #OnlineEducation #D2C #EC #Retail

【テーマ賞】ヘラルボニー

NEW LIFESTYLEのテーマ賞に輝いたのは「福祉実験カンパニー」を標榜するへラルボニーだ。

同社は知的障害のある作家のデザインをIP(知的財産)とし、大企業やスポーツチームなどと提携し商品化したり、まちづくりに活用したりする。現在は37施設・153人の作家による2,000以上の作品の著作権管理を担っているという。

ピッチに立った松田崇弥・代表取締役CEOは、知的障害者のなかには同じことをひたすら繰り返す特有の行動パターンを持つ人がいると説明。例えば「字と字をつなげることに強烈なこだわりがある」「葉っぱを延々と描く」「ボールペンでずっと黒丸を塗る」などで、作家一人ひとりの独特な個性につながっている。収益を作家に還元することで、年収が1,000万円に届くケースもあるという。

直近ではウォルト・ディズニー・ジャパンや日本航空(JAL)と協業するなどしている。松田CEOは「障害イコール欠落とか、障害者が作ったイコール安いという概念を変える。新しいブランドの騎手になりたい」と誓った。

ヘラルボニーの松田崇弥・代表取締役CEO

THEME 3 : NEW LIFESTYLEのスポンサー賞および登壇企業は以下の通り。

AWL| 映像解析のコア技術、エッジAIカメラソリューションの開発・提供

TimeTree|共有とコミュニケーションを前提としたカレンダーシェアアプリ「TimeTree」

SHE|女性向けキャリアスクール「SHElikes」

トリプル・ダブリュー・ジャパン|排泄予測デバイス「DFree」

Sanu|セカンドホーム・ サブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」

Woodstock|SNS型投資アプリ「woodstock.club」

【Woven Capital Management Company賞】【ビー・エム・ダブリュー株式会社】へラルボニー|アートライフスタイルブランド「HERALBONY」

THEME 4 : UPRISING DIGITAL

対象分野:#Saas #DX #5G #BigData #CustomData #Security #Blockchain #VR #AR #Metaverse #AdTech #Fintech #WEB3.0

【テーマ賞】エイターリンク

UPRISING DIGITALのテーマ賞は、ワイヤレス給電技術を開発するスタンフォード大学発スタートアップのエイターリンク。同社の開発する「AirPlug」は完全ワイヤレスで17メートル以上の給電を可能とする。元々は心臓のペースメーカーをはじめとする「メディカルインプラントデバイス」に給電する技術を開発していて、AirPlugはその技術を応用したものだ。

同社の技術はすでにファクトリー・オートメーション(工場自動化)などの分野で実装されている。工場の製造設備には多くのセンサーがつけられ、ワイヤ経由で給電されている。しかし機械が激しく動くなどしてワイヤが切断され、生産ラインが停止するなどの課題があった。岩佐凌・代表取締役CEOは「ワイヤレスで充電できれば停止する心配はなくなる」と力を込める。

今後は物流やリテール(小売)領域などにも展開していく。海外進出も進めていて、岩佐CEOは「ドバイでは現地の超巨大プロジェクトに提案も行っている。アジア地域では無線規格がアクセプトされている状態だ」と紹介した。

エイターリンクの岩佐凌・代表取締役CEO

THEME 4 : UPRISING DIGITALのスポンサー賞および登壇企業は以下の通り。

solafune|衛星・地理空間データを使ったデータサイエンスコンテスト

【グーグル・クラウド・ジャパン合同会社賞】Citadel AI|開発段階のAIの品質評価「Citadel Lens」や運用段階の自動モニタリング「Citadel Radar」

【株式会社三井住友銀行賞】アークエッジ・スペース|超小型人工衛星を中心とする多種類複数の人工衛星生産

【株式会社AGSコンサルティング賞】エイターリンク|ワイヤレス給電技術を使った配線のないデジタル世界の実現

ポケトーク|AI通訳機「ポケトーク」

【野村證券株式会社賞】【博報堂DYメディアパートナーズ賞】【株式会社インテック賞】CrossBorder|セールスインテリジェンス「Sales Marker」

issueHunt|オープンソース支援サービス「IssueHunt for OSS」やホワイトハッカーと企業をマッチングする「IssueHunt バグバウンティ」

【株式会社ネットプロテクションズ賞】LegalOn Technologies|AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」

GRAND AWARDはLogomix

全体を通じての最優秀賞にあたるGRAND AWARDには、HEALTHCARE&WELLNESSテーマ賞を獲得したLogomixが選ばれた。石倉大樹・CEOは「大変ありがたい。Logomixはまだ18名の小さな所帯で、時には『次に繋がるのか』と心配になることもあった。こういう賞を励みにぜひグローバルで勝てる企業になっていきたい」と喜びを語った。

(執筆:pilot boat 納富 隼平、編集:高橋 史弥)

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