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事業会社とスタートアップ。双方にとっての新しい可能性を、双方の未来を見据えて描くチームの想いとは

2022-08-29
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部

近年、事業会社やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(以下、CVC)からのスタートアップ企業への出資は増加傾向にある。しかし、スタートアップの成長戦略を実現する適切な資本業務提携先に出会う機会は限定的だ。CVCに限らず事業部本体からの調達可能性もあり、一つの企業の中でも複数の候補部署が存在し、スタートアップの戦略次第では同じ企業であっても適切な提携先の部署が異なることも多くある。そんな中、「STARTUP DB」の運営元である産業支援を推進するフォースタートアップス株式会社(以下、フォースタートアップス)のオープンイノベーショングループにて、スタートアップの成長戦略を実現するために適切な資本業務提携先を紹介するサービスを昨年4月に開始した。現在では国内外200社以上の事業会社やCVCと情報連携しながら、スタートアップと出資側の双方からサポート・伴走を続けている調達支援チームに話を聞いた。

スタートアップを支援し続けた企業だからできる、スタートアップと大企業の本質的なマッチング

元々は、人材をメインにスタートアップを支援し続けているフォースタートアップス。調達支援チームはどう生まれたのか。

■荒井 勇作(あらい ゆうさく)フォースタートアップス株式会社オープンイノベーショングループ 資本業務提携支援担当音楽業界に8年間従事し、プロモーション企画や販売促進、新規事業企画を経験。総来場者数30万人を越す大型興行案件から、PR,販売促進目的の企業案件まで8年間で延べ1500件を越すイベントの企画運営に携わる。同時に、映像配信や店舗プロモーションなどの新規事業立ち上げに参画し、責任者として従事。その後 合同会社DMM.com .make AKIBA事業部にジョイン。300本を越すイベントの企画運営に携わりながらも、企画営業チームのリーダーとして大手事業会社のオープンイノベーション支援を担当。

フォースタートアップスは成長産業支援を掲げ、主にHRという面にてスタートアップ企業を支援してきた。その中で執行役員 中村優太の元、成長産業というマーケットそのものをより拡充、加速させるための支援を行うため、オープンイノベーションチームが立ち上がった。

【荒井】スタートアップへの新たな支援の形を作る事はもちろん、このマーケットを形成するエコシステムビルダーである大企業や海外投資家、行政を含む様々なプレイヤーに対してフォースタートアップスの価値を提供できないかという構想がそもそもの背景でありオープンイノベーショングループが立ち上がりました。グループの組成に伴い、主事業のタレントエージェンシー事業で伴走しているスタートアップ企業のCEOから、「自社にとって最適なパートナーとなりうる事業会社を人材紹介のようにご紹介いただけないか」というご相談がきっかけとなり、資本業務提携サービスを立ち上げることになりました。昨今多くの事業会社や海外投資家が日本の成長産業マーケットに目を向けはじめ可能性を模索する一方で、スタートアップ企業としても自身のネットワーク外にも目を向け、より多くの可能性から最適なパートナーを求めています。このように双方が求めあっている事実がありながら、双方に対して適切に情報が届ききっていないという状態がマーケットにおける一つの課題だと考えています。STARTUP DBを含め多くの事業会社とのコネクション、ネットワークを持ち、かつ、黎明期からスタートアップ企業やマーケットと向き合い、精通している我々フォースタートアップスが可能性を見つけ出し、双方にとって最適なご縁となるような出会いを作っていくことで、課題解決に寄与し、このマーケットをより活性化できないかと考えています。

投資家・スタートアップの両面と伴走するからこそ生まれる新たなシナジー。そこに加えて新たな海外への挑戦とは

双方との伴走方法と、海外との関わり方

■宮本 健太(みやもと けんた)フォースタートアップス株式会社オープンイノベーショングループ 資本業務提携支援担当大学卒業後、新卒で三菱電機に入社。社会インフラ建設のプロジェクトマネジメントを経験した後、アバナードジャパン・日本IBMにてコンサルタントとして複数業界を支援。2019年3月にフォースタートアップスに参画し、ヒューマンキャピタリストとして採用支援に従事後、オープンイノベーショングループにて、資金調達支援を担当。

資金調達支援チームは現在、スタートアップサイドと、投資を実行する事業会社サイドの両面からサポートを実施している。

双方とどのように関わっているのだろうか。

【宮本】スタートアップサイドとは、各企業のCEOやCFOから資金調達の相談を受け、どんな投資家と会っていくのがそのスタートアップにとって最良かを、伴走しながら一緒に考えています。資金調達をするにあたって、成長戦略をどう描いていて、今回の調達における重要なポイントは何なのか、どういったアセットをもった企業と話せると良さそうか、どうやって企業・投資家と話をすると戦略の角度が高まるのかを具体的にヒアリングしながら、ディスカッションしています。そのディスカッション内容をもとに投資家を選定し、お引き合わせ、そして双方を引き合わせた後も適宜サポートしています。

【荒井】そのように起業家やCxOとディスカッションする一方で、スタートアップにとって可能性の幅を広げられるよう、常日頃大企業や投資家の皆様と情報連携をしています。具体的には、国内外における投資家並びにCVC・事業会社における投資部門の方々と会話をし、彼らが投資対象となるスタートアップをソーシングするにあたってのトレンド、注力している自社既存事業や、残りのポーションなど、昨今の投資状況や社内状況をヒアリングし適切な連携を取れるようコミュニケーションをとっています。現在、国内外200社を越す投資家と連携していますが、支援先であるスタートアップの可能性を広げるべく連携先の拡充も積極的に行っています。直近秦野さんがジョインしたのもあり、現在は国内のみならず海外投資家並びに事業会社・CVCの方々とコミュニケーション接点の構築を図っています。

双方との関わりを持つ一方で、支援先のスタートアップ企業からも海外投資家との接点や可能性の模索に対するリクエストが増加。

これまでは海外投資家との専任窓口がいなかった為に、既に日本での投資実績がある投資家以外とのネットワークを思うように開拓できていなかったが、2022年8月より、海外の投資家とのコンタクトを開始した。

【秦野】今般、より遍く海外の潜在的な投資家層に日本のマーケットを認知してもらうべく、これまで接触できていなかった海外VCを中心にコンタクトを取り始めています。また既に日本での投資実績がある海外投資家でも、彼らの自前のコネクションのみで投資先を探すより、我々と連携することで有望な投資先に出会える可能性がずっと高くなるということを認知してもらうべく接触しています。

■秦野 佳佑(はたの・けいすけ)フォースタートアップス株式会社オープンイノベーショングループ 資本業務提携支援担当大学卒業後、新卒で三井物産に入社。財務部で資金調達や全社利息収支改善に携わった後に南米ペルーに赴任、ペルー産温州みかんの日本初輸入等の新規事業を複数手がける。帰国後は肥料原料の海外マーケティング・販売を担当。2022年7月にフォースタートアップスに参画し、オープンイノベーショングループにて、海外投資家と国内スタートアップの関係構築・強化を担当。

スタートアップを支援しながらも事業会社のことを適切に理解をしながら双方を結びつけられるのが最大の強み

スタートアップ企業、CVC/事業会社にとっての課題とは

日々スタートアップ企業、CVC/事業会社からの問い合わせがある現在。実際にどのような課題を持って相談が生まれるのかを具体的に聞いた。

【宮本】スタートアップ企業の多くは、投資家と出会える機会を最大化・最適化したいという点でまずご相談いただくことが多く、資金調達をしたいタイミングにおいて、会える投資家の数や情報にギャップが生じており可能性をより広げたいというオーダーが多い印象です。スタートアップに出資したい事業会社・CVCが増えてきている中で、自力で多くの投資家と接点を持つことはなかなか難しいですし、資金調達以外にも事業シナジーの可能性も含めて知りたいというスタートアップが増えてきています。単に出資可能な金額もそうですが、そもそもどんな企業が自社の領域に興味を持っているのか、事業シナジーという面でもどんなアセットを双方で提供できるのかもわかりづらいのが現状です。そのような課題がある中、各スタートアップにとって最良なパートナーを見つけてくるのが我々の使命です。

【荒井】冒頭申し上げたとおり、この課題感は事業会社・CVCにとっても同様です。スタートアップの「現在」の事業内容はホームページや会社概要から調べれば一定理解できますが、1社1社が考えている「未来」における戦略は書いていません。自社の投資戦略、新規事業設立 / 中期経営計画における戦略等とスタートアップが掲げる未来とがフィットするかを実際に会う前に見極めるのは非常に難しいのです。現在というポイントを切り出したとしても、基本的にラウンド情報は公開されていないため情報収集に時間や労力がかかりますし、仮にラウンド情報を掴んだとしても、「今じゃない」となることもあります。結局は現在や未来を捉え、出会うべきタイミングで双方が出会うというのがとても大事です。また連携先が増えている理由のひとつとして、ソーシングの精度向上を図りたいというニーズがあげられます。CVCや事業会社等においては、自薦でスタートアップからアプローチがある場合や、他情報ソースからの紹介、これから投資や連携を考える事業会社にあたってはそもそもどこから当たるべきかを悩んでいる等の課題は様々あり、加えて人員やリソースが限られる中で、より良い案件の出会いを求めるニーズは必然かと思いますが、そのような背景からも自社の戦略や投資ニーズを捉えてのご紹介は非常に喜んで頂けます。あくまで一例ですが、ファンド組成直後のタイミングにおいては弊社との情報連携が難しかった企業様と組成後しばらくしてから連携を始めることも増えてきています。自薦他薦問わず、情報量を充足させるのが大事である一方で、やはり精度や角度を求める動きは多くなってきているように思います。このような背景もあり連携先が1年で200社以上に増えたのは非常に嬉しいことですし、連携先の皆様にとっても良い機会創出ができるよう動いています。

【秦野】また、海外という面においては、欧米の名だたるVCやCVCは有望な投資先をスクリーニングする際に、まずは自国または近隣諸国で探し、次に若年層人口の増加が最も著しい、すなわち潜在的なマーケットが大きい東南アジア、南米、ひいてはアフリカといった地域にスコープを広げるというような動き方をします。一方で日本は人口構成もさることながら、スタートアップマーケットの規模そのものが小さく一部のトップ層の海外投資家以外ではほとんど認知されていないというのが現状です。またそのトップ層の投資家もSaaSやDeepTechといった特定セクター/ステージのスタートアップに集中し物色対象が広がっていません。その現状を変えるべく、まずは当社が前面に出て日本のスタートアップエコシステムの代弁者になったつもりで、日本マーケットの全体像、そして昨今のマクロ環境下でも事業成長が著しい様々な事業領域のユニコーン/デカコーン候補を認知してもらい、関心度を高めるところから始めて行きたいと思います。近いうちに、これまで日本での投資実績がない海外投資家の「日本第1号案件」を当社資金調達チームの伴走でいくつも実現し、それを呼水に日本のスタートアップエコシステムに海外からより大きな資金が流れてくるようにしていきたいです。

CVCとスタートアップ、双方にとっての新しい可能性を双方の未来を見据えて描く

実際にお引き合わせした事例から見える、CVCサイドとスタートアップの思いを紡ぐ彼らの提案方法とは

当チームとしての初案件だった、Luup社の事例について調達支援チームとしての想いを聞いた。

【荒井】初めてのご支援という点ももちろんですが、我々のご提案がきっかけで新たな未来が実現できたという意味で非常に印象に残っている支援です。最初に私たちがLuup 岡井CEOとお話した時には、いわゆる地方銀行からの調達並びに資本業務提携という未来についてはその時点のラウンド戦略においてはスコープ外でした。一方で私達の連携先である十六銀行さんがCVC設立をするにあたり、描いていきたい未来の道筋を担当者から伺っていました。ファンドを組成されたばかりで、自社の得意な領域にどうしても目が行ってしまう一方、思いもよらないような新たな可能性を探していきたいというお話をされていました。また、今後の投資スコープとして地場の発展に寄与できるスタートアップ企業への投資を望まれていました。そこで、Luup 岡井CEOに今後の事業戦略において地方銀行というパートナーと組んでいく可能性のご提案を差し上げたところ、ご賛同いただき出会いを作るに至りました。まさに私たちが掲げているスタートアップ企業に対する新たな可能性を作るという面において、双方にとって良い出会いを作れたのではないかと思っています。加えて、もう一つ大事にしてることは、事業会社やCVCの中でも「誰に話にいくか」です。このケースにおいては、こんなファンドにしていきたい、地場に貢献していきたいという思いを強く持っている担当者をお引き合わせいたしました。既存事業領域とは離れていたり、組成直後だったのもあり正直紆余曲折はありましたが、結果的にうまくいったのは担当者の熱意とその熱意に答えようとする岡井CEOをお引き合わせしたことが大きな要因だと考えています。

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その他の支援事例はこちら

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スタートアップ市場に流れてくるお金の総量を増やすには

調達支援チームが目指す未来、日本

現在3名で世の中の新たなシナジーを生むために活動する調達支援チーム。どのような未来を見据えながら活動しているのだろうか。

【宮本】私としては、このサービスが世の中から必要がなくなっていくことが理想です。事業会社や海外投資家の日本に向けた投資が、我々を通さなくても円滑に進んでいくような状況を目指しています。それまでの過程で、私たちが間に入ることによって新しい投資機会を生み出し、次のリスクを取れる状態を投資家に提供する。それによって5000万〜2億円規模である出資可能額を、5億、10億と増える状況を作り、成長産業に流れてくるお金の総量を増やしていきたいです。

スタートアップ企業にとっても大企業・CVCにとっても圧倒的な成功体験を作っていきたいと話す荒井。

良い成功体験、良い出会いを通じて、価値のあるケースが増えていくことによって採用や予算が増えていく。ファンドにおいては、より多くのファンドレイズができるようになってくる。スタートアップにとってはより多くの成長機会が得られ、資本業務提携という意味ではより事業が拡大し、成長していく。

このような循環を生むことによって、スタートアップマーケットにおいて、流れてくる総量が増えていくという。

【荒井】伸びたスタートアップ企業はIPO後においても、より積極的に今度は投資をする側にまわったりだとか、資本業務提携をする側に立っていくと思います。そういった意味でも私たちがひとつひとつしっかりと大きな成功体験を生んでいくということが非常に重要ですし、私たちがやっていきたいことです。既存事業の多くの方が、よりこのマーケットへのチャレンジをしていく。フォースタートアップスとしても事業部としても成功体験をうみ、事業会社もスタートアップもより多くの挑戦ができ、その挑戦がより成功となるようなきっかけを作っていくことが私たちの描いている未来、トライしていきたい未来です。一番先の遠い未来には私たちのように間に入る人間がいなくとも、誰もがトライをしていく未来が来ればいいなとは思いながらも、いなくなっていいよと言われるその日まで頑張りたい。今後グローバル化がより進んでいく中で国内に閉じる訳ではなく、日本のスタートアップの中からもより多くが海外に挑戦していけるようなチャンスも作って行ければと思っています。

【秦野】同様に資金調達を検討している国内のスタートアップが、真っ先に当社を思い浮かべ、国内外問わず資金調達に関して全幅の信頼を置いて頂けるようになるようにしていきたいです。このような唯一無二の立ち位置を不動のものにし、当社が標榜するハイブリッドキャピタルが日本のスタートアップエコシステム拡大/成長により一層寄与するような未来を思い描いています。

今後さらなる支援事例が増え、世の中に新たな共創が生まれ続くことを期待するとともに共創事例を今後もSTARTUP DB MAGAZINEとしても追っていく。インタビュー:鈴木美紗撮影:鈴木美紗

■調達支援サポートのご案内■

事業会社やCVCの出資ニーズをもとに、スタートアップ企業に最適な資本業務提携候補をご紹介します。国内外200社以上の事業会社やCVCと情報連携をすることで、出資注力領域や出資可能金額、出資検討期間などの出資ニーズを集約しているこのサービス。スタートアップの資金調達目的やスケジュールに沿った調達可能性がある企業との商談を実現します。

■STARTUP DB ENTERPRISE参画パートナー企業申し込み受付中■

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