近年、大型資金調達のニュースが多く見受けられる。日本経済新聞によると、2017年に比べ、2018年に資金を調達したスタートアップは企業数こそ減っているものの、STARTUP DB調べで合計資金調達額は1.5倍に伸びている。5年で見ると、4倍にまで伸びている。つまり、1社あたりの金額が増加しているということが言えるだろう。大学とスタートアップの提携や、経済産業省によるスタートアップ支援プログラム”J-Startup”、INCJをはじめとする官民ファンド設立など、産官学問わず動きが活発になっている。更には、大手企業もオープンイノベーションに乗り出し、CVCを設立するケースも増えており、スタートアップエコシステムの活性化も年々進んでいる。そんななか、2019年もいくつもの大型資金調達が実施されている。本記事では2019年1月〜8月までの合計資金調達金額をランキングとして紹介する。
2019年1月〜8月までの期間でもっとも資金を集めたのは、マーケティングプラットフォーム「b→dash」の開発をおこなうフロムスクラッチで100億円だ。次いで「Autoware」を活用した自動運転システムの開発をしているティアフォーの90億円、小型SAR衛星「StriX」の開発を行うSynspectiveが87億円と続く。
TOP20位のうち、宇宙ロケット、ロボット、自動車などのディープテック系のスタートアップが6社ランクイン。ディープテック系のスタートアップで大きな資金調達をしたのは、以下の企業だ。
・ティアフォー・Synspective・MUJIN・Spiber・アストロスケールホールディングス・GROOVE X
他には、フロムスクラッチやSmartHR、ヤプリなどのSaaS系の企業が上位にランクインしている。中でも2019年7月に発表されたSmartHRの61.5億円の調達したニュースは話題を呼んだ。アメリカで上場しているSaaS企業は現在50社以上あり、それらの売上継続率の中央値は120%を超える。SlackやZoomのような伸び盛りの企業にもなると、売上継続率が140%〜180%。SmartHRの売上継続率は現在130%近くあり、アメリカで伸びているSaaS企業と比べても見劣りしない成長率を誇る。
今回のランキングに入っている企業だけを見るとSaaS系企業に関して海外企業が投資している傾向にある。
- フロムスクラッチ引受先海外企業:KKR- SmartHR引受先海外企業:Light Street Capital、ほか1社
ここで注目したいのはフロムスクラッチとSmartHRの引受先だ。フロムスクラッチの引受先となったKKRは、初の日本スタートアップへの投資である。KKRがリード投資家として40億円を出資している。さらにSmartHRに出資したLight Street CapitalはSlackやShopify、Uberといった世界屈指の企業に投資している。もう1社海外企業から調達しているが、残念ながら社名は公開されていない。非公表海外企業に関しては、SmartHR代表宮田氏のブログで「世界で最も著名な投資家のうちの1社」と明かされている。本記事は今後も継続的に連載していくので、今後の資金調達ランキングの動向にぜひ注目していただきたい。