「ゼロから分かる スタートアップ用語解説」は、これからスタートアップについて詳しく知りたい人たちを対象に、基礎的な内容を分かりやすくお伝えします。今回は、スタートアップの生存戦略にも深く関わる「バーンレート」について解説します。
この記事で分かること:
・バーンレートとは
・グロスバーンレート・ネットバーンレートの違い
・バーンレートを用いたランウェイの計算方法
「バーンレートを下げよう、と投資先には言っています」。
取材の過程で、複数の投資家からこんなお話を聞きました。スタートアップはVC(ベンチャーキャピタル)や銀行などの金融機関、それに事業会社などから資金調達をして成長していくのが一般的ですが、マクロ環境の影響で市況は冷え込んでいます。
スタートアップや投資家がバーンレートをより強く意識し、引き下げに向けて舵を切るのは、こうした変化と無縁ではありません。
バーンレートは直訳で「資金燃焼率(Burn Rate)」。スタートアップの手元資金が燃えるように減っていく速度のことを指します。
バーンレートには2つの種類があります。
まずは「グロスバーンレート」。「グロス」とは総額のことで、月あたりのコストを指します。求め方は「コスト総額÷期間(月)」です。
例えば半期(6ヶ月)の営業活動を振り返った時に、人件費、広告宣伝費、研究開発費、それにオフィス賃料などのコストが1,200万円かかったとしましょう。この時のグロスバーンレートは、
1,200万円(総コスト)÷6(ヶ月)=200万円
ひと月あたり200万円が会社から出ていっているということです。
このグロスバーンレートから売上を引いて出すのが「ネットバーンレート」です。
グロスバーンレートは会社から出ていくお金の総量です。お金が出ていくばかりでは、会社はやがて継続不能になってしまいます。これに対し売上は会社に入ってくるお金ですから、バーンレートを引き下げてくれるというわけです。
前出の会社が、月100万円の売上を得ていると仮定します。この時ネットバーンレートは、
1,200万円(総コスト)÷6(ヶ月)-100万円(売上)=100万円
ということになります。
バーンレートの適切な把握はスタートアップに欠かせません。なぜなら「ランウェイ」の計算に欠かせない数字だからです。
ランウェイとはスタートアップにとって「手元資金が尽きるまでの残り時間」のこと。
上記のネットバーンレートが100万円の会社を例にしましょう。この会社、手元資金が1,500万円残っているとします。
この場合ランウェイは、
1,500万円÷100万円(ネットバーンレート)=15ヶ月(ランウェイ)
「毎月100万円出ていく会社で、手元の資金が1,500万円なのだから、15ヶ月持ちます」ということですね。
スタートアップにとっては、赤字を許容してでも事業の急拡大を目指す戦略は決して珍しくありません。ただしそのまま手元資金が尽きてしまえば元も子もありませんから、バーンレート、そしてランウェイを見極めながら、資金調達のタイミングや調達目標金額を決めることになるのです。
一方で、冒頭書いたように、記事作成時点でスタートアップを取り巻く資金調達環境は冷え込んでいます。大胆に赤字を掘って比較的短いスパンで調達を繰り返すよりも、利益を確保する方向に転換し、ランウェイを可能な限り引き延ばすケースもあるでしょう。
「バーンレートを抑えよう」と投資家がアドバイスするのもその一環で、売上を急に伸ばすというより、総コストを見直すことで支出を抑え、ランウェイを確保するという意味合いで使われているのです。