上場企業数は、2016年54社、2017年49社、2018年63社と50社前後の上場が続いている。この中には、スタートアップのマザーズ上場も多い。本記事では、過去3年にしぼってマザーズ上場企業の上場時の給与に関するリサーチを行った。平均給与に加え役員報酬に関してもリサーチを実施。データから読める業界・年齢・従業員数と給与の関係を考察する。まずは、全166社の平均給与に関してみていく。
2016年から2018年の間でマザーズ上場した166社の従業員の平均年間給与を調査(新規上場のための有価証券報告書を基にしている)。その結果、166社の平均年間給与は、533万円であった。年収別のグラフが以下だ。
グラフからわかるように、ボリュームゾーンは400~500万円で50社、また700万円までの範囲に90%にあたる150社存在する。一方で、平均給与が900万円を超える企業が7社存在した。このように全体を通しては非常に高い数値というわけではないものの、給与の高い企業も一定数存在することが見て取れる。次に、平均給与TOP5の企業が以下である。
M&Aの仲介助言などを手掛けるストライクが1,640万円でトップ、医薬品・医療品などの開発を行うソレイジア・ファーマ、経営コンサルティング事業を手掛けるフロンティア・マネジメントが次に続いた。1,000万円を超えたのは以上3社という結果であった。また、1,000万円を超える企業の内2社がコンサルティング事業を手掛ける企業であった。
次は業界と平均給与の関係をみていく(業界は33業種区分)。業界別に平均年収を算出したところ、N数が少ないため、参考値ではあるものの、TOP5の業界は次のような結果となった。
業界別では医薬品と電気ガスが900万円を超えるなど、他の業種に比べて高い数字であった。不動産業は10社でそのうち7社で平均給与600万円以上と全体的に給与が高い傾向にあった。サービス業においては、コンサル会社が給与が高いものの、サービス業平均で、523万円と高い数字ではなかった。
次に平均給与に影響しそうな要素である平均年齢と従業員数と合わせてみていく。まずは平均年齢(各企業の従業員全員の平均年齢)についてだ。従業員の平均年齢20代の企業が27社、30〜35歳の企業が68社、35〜40歳が47社、40〜45歳が17社、45歳以上が7社。また、それぞれの年代に該当した企業の平均年収は以下だった。
このグラフからは平均年齢が高い企業ほど給与が高いという完全な相関関係がみられた。具体的な年齢別では平均給与上位の企業の多くが平均年齢は30代以上であり、平均年齢が20代の企業(27社)では平均給与が600万円以上の企業が1社のみという結果であった。次に従業員数との関係である。
従業員別で見ると、従業員の数が多くなるほど平均給与は低くなるようだ。従業員数が10人未満の企業では、全てが平均給与を超えているなど、従業員数が一桁の企業は総じて平均給与が高いという傾向も見て取れた。
次は役員報酬に関してみていく。一人当たりの役員報酬は全164社(2社役員報酬不明企業あり)平均で1,775万円であった。役員報酬別企業数が以下のグラフである。
1,000万~1,500万が53社と一番のボリュームゾーンとなったが全体的にはばらつきがみられる結果ではあった。役員報酬が2,000万円以上の企業が42社存在していて、役員報酬が高い企業は全体的に多い傾向にあることがわかる。次に役員報酬ランキングは以下であった。
166社のうち、一人当たりの役員報酬TOP5をみると、ティケーピーが一人あたり2億円近くと圧倒的に高い結果であった。次にリーガル不動産が続き、不動産業界企業が上位2つを占める結果となった。小売業のベガ・コーポレーションとAmidAホールディングスディングスがそのあとに続く。業界別の役員報酬に関しては、次のような結果であった。
業界別の平均役員報酬では、不動産業が4,000万円を超えておりほかの業界に比べて圧倒的に高い数字であった。10社中6社が2,000万円を突破していて、ティーケーピー・リーガル不動産に限らず、他業界よりも役員報酬が高い傾向にあることが分かった。2番目の業界としては小売業が入ってきている。従業員の平均給与では、ランクインしていないことから、役員報酬が高い業界といえそうだ。平均給与では医薬品業界が、役員報酬では不動産業界が他業界に比べて圧倒的に高い数字であった。企業の選択において重要なファクターである給与。スタートアップの給与傾向は今後も変化していく可能性は高いが、近年の傾向として参考にしていただければ幸いだ。