2024年上半期に国内スタートアップが調達した資金の総額は3,725億円だったことが、STARTUP DBの調査で分かった。数字は速報値のため今後一定程度の上昇が見込まれるが、対前年比で下回る勢いだ。
金融緩和を背景に年間の調達額が1兆円を超えた2021年・22年からの落ち込みは明らかで、コロナ後の「調整局面」は未だ終わりを見せない。一方で大型調達に成功したスタートアップや投資マネーが集まり続ける領域もあり、企業・領域ごとに「選択と集中」が強まっていると言えそうだ。
2024年上半期の資金調達金額は、速報値ベースで3,725億円。これは新株を発行するエクイティファイナンスだけでなく、金融機関からの借入などを指すデットファイナンス、それにクラウドファンディングなど複数の資金調達手法の総額だ。
また、データ集計時点の速報値であり、今後新たな調達の判明などにより金額は上昇する。確定値は4,249億円程度になるとみられている。2023年上半期(4,570億円)よりも300億円余り、同下半期より800億円以上減少する見込みとなった。
スタートアップの資金調達金額は新型コロナウイルスの流行に対する金融緩和などを背景に一気に拡大し、2021年・22年の両年には年間調達額が1兆2,000億円を超えた。しかしその後、アメリカを中心とする世界の中央銀行の利上げやロシアによるウクライナ侵攻に端を発した世界経済の不安定化などの煽りを受け、調達環境は冷え込んだ。2024年上半期の数字は、こうした流れを忠実に反映した数字といえる。
資金調達の実施社数は速報値で1,216社。こちらも速報値であり、データ更新に伴って1,624社程度に増加すると見込まれる。資金調達金額自体は微減したものの調達社数が増える背景には、1回あたりの調達金額が相対的に低い「シード」「アーリー」と呼ばれる創業からサービスリリース直後のスタートアップの調達が盛んとみられることがある。
全体の数字が伸びを欠くなか、成長が期待される分野もある。スタートアップを「インダストリー別」に分類し、資金調達金額・社数を集計したところ、伸びを見せそうなのが「エネルギー・環境」だ。2024年上半期の資金調達金額は617億7,000万円で、主な大型調達事例には大型蓄電池のパワーエックスの95億円、新素材のSpiberの70億円超などが含まれている。資金調達金額全体に占める割合は10.58%。3年前の2021年(5.54%)と比べておよそ5ポイント増えていて、存在感の高まりを強く感じさせる。
一社あたりの調達額が大きくなりがちなため、各社の調達タイミングに数字が左右される面こそあるものの、全体として厚みを増しているのが宇宙領域だ。スペースデブリ(宇宙ごみ)除去のアストロスケールホールディングスが上場前にデットファイナンスで70億円を、小型SAR(合成開口レーダー)衛星関連のSynspectiveが57億円をそれぞれ調達している。宇宙分野ではSBIR(Small Business Innovation Research / 解説記事)に採択されたスタートアップも少なくなく、グラフの数字以上に研究開発費用などを獲得しうることも考慮しておきたい。
STARTUP DBは、【2024年上半期】国内スタートアップ投資動向レポートを2024年8月7日(水曜日)に公表する。
国内スタートアップエコシステム全体の資金調達トレンドから、エクイティなど調達手法別の傾向、それにIPO・M&Aなどのイグジット状況などを俯瞰し、数字とともに浮き彫りにしていく。
さらに独立系VC・金融系VC・CVCと事業会社など、属別の投資動向も分析。事業の進捗を示す「シリーズ」ごとの調達状況も整理したほか、今回から新たに「インダストリー別」の資金調達動向も掲載する。様々な角度から国内エコシステムの今を切り取り、可視化した。
投資動向レポートの公開に合わせ、最先端で活躍するVCのお二人に国内スタートアップエコシステムの「今」を徹底的に解説してもらうセミナーを開催します。
セセミナーでは、資金調達額や投資家属性別のトレンド、それに注目の大型調達やイグジット事例など独自調査の結果をグラフィックで視覚化しながら、最先端で活躍するVCお二人にご解説を頂きます。
「スタートアップ冬の時代」と言われた2023年を踏まえて、国内スタートアップエコシステムではどのような動きがあったのか。
スタートアップの今と2024年下半期の展望を「最速」で読み解き、直接質問もできる1時間半。ぜひこの機会をお見逃しなく!
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・国内の最新スタートアップ動向を知りたい
・ファンド、投資家、産学連携など成長産業における最新動向を網羅したい
・今、勢いのあるスタートアップを見つけたい
・IPOやM&A、事業提携などの傾向を知って、自社に活用したい
開催日時:2024年8月21日(水)12:30~14:00
参加料:無料
参加方法:オンライン視聴
主催:フォースタートアップス株式会社(STARTUP DB)
※競合企業様などのご参加をお断りする場合がございます。予めご了承くださいませ。
※動画視聴方法につきましては、お申し込みいただいた方へのみご案内させていただきます。
2006年グロービス・キャピタル・パートナーズ入社、2012年同社パートナー就任、2013年最高執行責任者就任、2019年同社代表パートナーに就任。同社は、国内向け独立系ベンチャーキャピタルとして最大規模の累積1,100億円を運用。主なトラックレコードは、Visional(旧ビズリーチ)、Yappli、クリーマ、アカツキ、ブイキューブ、ライフネット生命保険、Quipper、キラメックス。主な投資担当先は、スマートニュース、アンドパッド、READYFOR、akippa、アグリメディア、FLYWHEEL、リノベる。、tebiki、セイビー、TERASS、ナレッジワークなど。2021年日本ベンチャーキャピタル協会理事就任(現任)、2024年同協会ナレッジ部会部会長就任(現任)。東京大学工学部非常勤講師(現任)。同社以前は、経営コンサルティング会社(現PwC)にて、プロジェクトマネジャーを歴任。東京大学法学部卒。
2003年にエヌ・アイ・エフベンチャーズ株式会社(現:大和企業投資株式会社)入社。主にネット系スタートアップの投資業務及びファンド組成管理業務に従事。2010年にインキュベイトファンド設立、代表パートナー就任。2015年より一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会企画部長を兼務。その他ファンドエコシステム委員会委員長やLPリレーション部会部会長等を歴任。2023年同協会理事就任。
慶應義塾大学環境情報学部卒業、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて転職サイト「DODA」(現doda)立ち上げなどを経て、2016年に株式会社ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス株式会社)を創業、代表取締役社長に就任。2014-15年「Japan Headhunter Awards」にて「Headhunter of The Year」2年連続受賞、2016年に国内初「殿堂」入りHeadhunter認定。2019年より日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員、2020年より経団連スタートアップ委員会企画部会/スタートアップ政策タスクフォース委員に就任。2021年に公益社団法人経済同友会入会。2022年に一般社団法人関西経済同友会に入会。2023年『スタートアップで働く』(ディスカバー・トゥエンティワン)を出版。