2023年10月に発表された資金調達を金額ベースでランキング形式にまとめた。
三井住友銀行をアレンジャーとするシンジケートローンで50億円を調達するとしたQPS研究所が1位となった。
オンライン診療サービスなどを展開するMICINがシリーズCラウンドとして実施した40億5,000万円の調達が2位だった。
100億円を超える調達はなかった。これは2023年6月以来4ヶ月ぶり。
ランキングは以下の通り。
(登記簿から確認された調達、もしくは発表日をベースに集計している)
1位は小型SAR衛星の開発・運用を手がけるQPS研究所の50億円。三井住友銀行をアレンジャーとするシンジケートローンによるもので、期間は5年。
SAR(Synthetic Aperture Radar=合成開口レーダー)は、電波を使用して地表の画像を得るレーダー。雲や噴煙を透過し、昼夜を問わず地表の様子を観測できるという特長がある。QPS研究所は従来の1/20の質量、1/100のコストで高精細小型SAR衛星を開発することに成功していて、現在は3機を運用しているという。
調達にあたっては、中小企業基盤整備機構の「革新的技術研究成果活用事業円滑化債務保証制度」の適用を受けた。
これは研究開発成果の事業化を目指すスタートアップが、特定の法律に基づく認定を受けるなどした場合に活用できるもので、中小機構は元本の50%(25億円)を債務保証することになっている。QPS研究所は発表と同日、東証グロース市場の上場承認を受けている。上場日は12月6日。
2位はオンライン診療サービスなどを展開するMICINの40億5,000万円。シリーズCラウンドとして、第三者割当増資とあおぞら企業投資からの融資を組み合わせた。
MICINは、患者が問診、診察、決済などをスマホやパソコンで完結できるようにするオンライン診療サービス「curon(クロン)」のほか、患者の情報が集まる治療補助アプリ「MedBridge」などを展開している。オンライン医療事業については、2019年から22年にかけて病院・クリニックでの導入数が4倍になるなど成長しているという。
調達した資金はプロダクト開発のほか、マーケティングや治験、それに人材への投資などに充てられる。出資に加わったアルフレッサと東邦ホールディングスとは協業も進めていく。
大豆由来の植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZが3位となった。同社のシリーズCラウンドは総額71億円だが、10月に発表されたデットファイナンス(用語解説)の34億円と鹿児島銀行による2億円の出資を合わせた36億円がランキング算定の対象額となっている。
DAIZは発芽直後の大豆に由来する植物肉「ミラクルミート」を開発する。同社の落合孝次・取締役研究開発部長が考案した「落合式ハイプレッシャー法」により、うまみ成分やビタミンが豊富に含まれる植物肉を作り出せるとする。
デットファイナンスによる調達にあたっては、経済産業省の認定を受けた企業が中小機構による債務保証を受けられる「ディープテックベンチャーへの民間融資に対する債務保証制度」など複数のスキームを活用した。調達した資金は、2025年2月操業予定の植物肉工場への投資などに充てる。