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多様かつ高性能なプロセッサーでAIソリューション協業に取り組む、インテルの雄心

2022-01-04
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部

データのやりとりや分析・利活用を核としながら、強固なビジネスを構築する──世界最大の半導体メーカー・インテル株式会社が標榜しているのが、DcX(データ・セントリック・トランスフォーメーション)の推進だ。

2019年からインテル IoT プラネットをオンラインフォーラムとして開設し、AI/IoT関連のさまざまな情報を発信中。また、2021年10月には東京オフィス内に「データ・セントリックCoE」を開設。同社のソリューションを余すところなく提供し、パートナーや顧客企業とのAI開発を加速させている。

DcXの中枢を担うIoT/AI領域において、AIスタートアップとの連携強化に注力しているのが、パートナー事業本部でセールス・マネージャーを務める今井 康之氏。スタートアップがインテルとの協業で得られるベネフィットは何なのか。また、パートナーシップで広がる未来とは──今井氏にお話を伺った。

インテルの技術力とエコシステムでAIソリューションを最適化

■今井 康之(いまい・やすゆき)
理学部物理学科卒業。株式会社日立製作所を経てインテル株式会社に入社。インテルではパートナー事業本部にてソフトウェア・ベンダー向けにインテルAI推論ツールキット「OpenVINO™ ツールキット」を活用したインテルのハードウェア上でのソリューション構築、及びパートナーとの協業支援を行っている。

本題に入る前に、まずはインテルの事業内容について簡単に触れておきたい。

1968年に米国で設立して以来、同社の屋台骨を支えてきたのが卓越した半導体技術だ。インテルのハードウェアが組み込まれる領域はPC、サーバーのほか、OA機器、産業機器、医療機器と多岐にわたっている。

今井「近年は処理のニーズに合わせ、インテルのハードウェアを組み合わせてソリューションを構築するXPU戦略を取っています。CPU、GPU、FPGA、DLアクセラレーターなどを組み合わせることにより、エッジからクラウドまでさまざまなユースケースで柔軟なソリューションを構築できます」

開発ツール、ハードウェア製品、マーケティングなどの協業先などが所属するエコシステム(引用:インテルIoTプラネット Simplifying AI Transformation at the edge)

今井「加えて、完成品を持たない半導体メーカーの強みを活かし、あらゆる業種や業態とのネットワークによる中立的なポジションで、新たなサービスや機会を創出。パートナー同士がつながり、社会に実装していく取り組みを支援しています。当社が確立する『インテル® パートナー・アライアンス』には、世界中で6,000社以上の企業が名を連ねています。幅広いネットワークを築き、新たなビジネスの種を生み出せることに、参画するメリットを感じていただけるはずです」

インテルのハードウェアとオープンソース・ソフトウェアがもたらすAIソリューション開発のメリット

学習済みモデルをインテルハードウェア上で最適化するOpenVINOツールキットのイメージ図

今井氏が担当するIoT/AI領域においてはインテルのハードウェアとそれを最適化するためのオープンソース・ソフトウェア群が活用されている。このインテルのハードウェアとソフトウェアを通じて、スタートアップをはじめとするAI開発に取り組む企業は具体的にどのようなメリットが得られるのだろうか。

今井「あまり知られていませんが、インテルのCPUにはAIを高速化する命令機能(インテル® DL ブースト、VNNIなど)やインテグレートされているGPU機能があります。さらにCPUを中心としたさまざまなインテルのハードウェア性能を最大限に発揮するためのオープンソースの開発ツールキットを提供しています。中でも代表的なツールキットが、AI推論に特化したOpenVINO™ ツールキットです」

ここで、OpenVINO™ ツールキットの主な特長を4つ挙げてみたい。

1, 学習済モデルの最適化:インテルハードウェアに最適になるよう学習済モデルの量子化や軽量化を行ったIR形式に変換することで、AIソフトウェアの性能のハードウェア上で最大限に容易に発揮できる。

2, インテルハードウェアへの容易な実装:IR形式に変換された学習済モデルは、インテルのハードウェア上に容易に実装が可能。また、コードを1行修正するだけで、CPU、GPU、FPGA、DLアクセラレーターなど、幅広いインテルのハードウェア、最新世代への実行が可能。

3, 豊富な学習済モデル:200以上の学習済みモデルを集結。パブリックな学習済モデルからインテル独自の学習済モデルまで幅広く容易に使うことができ、モデル作成における開発コストの削減が見込める。

4, その他の機能:マルチメディア・フレームワークGstreamerの推論用のDeep learning streamer、追加学習ツールのTraining Extentions、量子化ツールとして、学習済みモデルの量子化のためのPOTや量子化を考慮したトレーニングのためのNNCFなど、さまざまなAI推論用の機能を用意。

このほか、AIの学習部分ではTensorFlow、PyTorchなど主流なDLフレームワークを最適に使用するためのインテル® AI アナリティクス・ツールキットがある。これはOneAPIというインテルのソフトウェア群の1つで、その他にCUDA変換機能などさまざまな開発者向けのオープンソース・ソフトウェアだ。加えて、パートナー企業は専門のエンジニアチームからインテルのハードウェアで構築する上でのサポートが受けられる。

今井「ソリューション構築後は、インテルのエコシステム上でさまざまなパートナーと連携をすることができます。ODM、販売代理店、SIerなどと連携することで、ソリューションの販売体制、マーケティング、保守体制を強化。さらにインテルが抱える各業界のスペシャリストと連携することでエンドユーザーへの販路を構築することも可能です。

また、インテルのパートナープログラムを活用することで、インテルのグローバルカタログへの製品登録、スケーリングの為のファンド支援、インテルロゴの活用などができます」

インテルが目指しているのは、AI開発に取り組む企業と手を取り合って、新たなAI技術をソリューション化し、エンドユーザーに提供すること。その実現のため、スタートアップを含むパートナー企業には、ファンドも含めた幅広いサポートを展開している。

複数社による異例の実証実験に採用された、「OpenVINO」の優れたユーザビリティ

ここで、ドラックストアチェーン・ココカラファインの店舗を舞台にした実証実験を紹介したい。開発環境、実行環境にはOpenVINOツールキットが採用され、エンドユーザーに向けた実験が進められている。

医薬品をはじめ、化粧品や日用品、食品などさまざまなカテゴリーの商品を販売するココカラファイン。各メーカーはポスターやPOPなどの販促ツールを制作し、各店舗に配布しているものの、大半が未使用のまま破棄されていた。店舗スタッフが忙しく、貼り替える暇がないからだ。

加えて、データ活用の面においても課題があった。以前よりPOSデータやIDデータから購入実績の把握や顧客分析を行っていたものの、「買う前に何を悩んでいたのか」「なぜ購入に至らなかったのか」など購入前データの収集・活用が十分に行われていなかったのだ。

今井「実は、ココカラファインはデータに関する問題を抱えていました。本部でPOS分析を行い、フィードバックしているものの、全国に展開している店舗数は1,300以上。顧客の属性や年齢構成などは立地によって違います。そのため、新商品の販売戦略はすべて店舗スタッフの“感覚知”に委ねられていたのです」

店舗に負担をかけることなく、効果的な販促活動をしたい──各社の声を受けて、2021年4月、ココカラファインなど複数の小売業とメーカー5社がタッグを組む、異例の実証実験がスタートした。日本最大級の流通関連団体・一般社団法人リテールAI研究会がその牽引役となり、インテルとパートナーを組むSBクリエイティブ株式会社がシステム構築やコンテンツ制作を担っている。

今井「実験では、ココカラファイン3店舗に、インタラクション型のデジタルサイネージと赤外線センサー、ウェブカメラ、解析処理を行うためのエッジ・コンピュータを設置。ターゲットとなる来店客の属性や状態をAIで識別し、仮説を立てながら最適なコンテンツを表示して行っています」

システムの構築にあたっては、リードタイムの短縮とコストダウンを理由にOpenVINOツールキットが採用された。

今井「来場者情報の学習済みモデルがすでにあり、迅速かつ安価なシステム構築が実現できたこと。ハードウエアが最適化されるため、拡張性が高く処理が速いことなど、OpenVINOツールキットならではの“優れたユーザビリティ”が現場でも評価されているようです」

この実証実験は、2021年12月現在も引き続き行われている。今後は、来店客とより自然なコミュニケーションが図れるよう、デジタルサイネージに表示するコンテンツ制作にもAIを活用していく構えだ。インテルでは、この先もスタートアップ企業をはじめとした多くのパートナーと二人三脚で取り組んでいく。

わずか2週間で商談オファー8社。「STARTUP DB」をフル活用しながら、AI社会実装を促したい

中立的な立場で、パートナー同士やさまざまな業界の枠を超えた企業を「つなぐ」ことができる数少ない企業、インテル。今井氏は、さらに共創の輪を広げ、AI社会実装を促したいと意気込む。

今井「そのために1社でも多くのAI開発に注力する企業と出会いたい。こうした想いから、利用を開始したのが、「STARTUP DB ENTERPRISE」でした。情報収集が困難なスタートアップ企業が13,000社以上もデータベース化されており、非常に重宝しています。全体的に無駄がなく、シンプルな点も気に入っています。

驚いたのは、スタートアップに向けてアプローチをはじめてから早2週間で、すでに8社との商談や協業の打ち合わせが実現したこと。幅広く声をかけずにターゲットを絞って声をかけたにもかかわらず、新規性の高いAI技術を持つ企業と複数知り合うことができました。既にOpenVINO™ ツールキットの技術検証や代理店を交えた協業に入っている企業もあります。今後は協創を通じて、WIN-WINの関係を深めていきたいと考えています」

加えて、STARTUP DBを運営するフォースタートアップス株式会社に対してもサポート体制に満足している、と今井氏。

今井「スタートアップならではのフィロソフィーやビジョン、考え方や市場動向など大企業では知り得ないような貴重な情報を、惜しみなく提供してもらえるのがありがたいですね。先日は自社のイベント内容にもアドバイスしてもらって、本当に助かりました。

今後もフォースタの協力を仰ぎながら、スタートアップとのさらなる関係構築を図っていきたいです」

AI開発会社と確かなパートナーシップを組みながら、共に成長し、IoT/AI市場を活性化させていく──壮大な目標に立ち向かう今井氏の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

インタビュー:福嶋聡美
撮影:加藤秀麻

 

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