事業会社がスタートアップに投資を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が増えている中、DMMが新たにファンドの設立を発表した。「DMM VENTURES」と名付けられたこのCVCは、100億円規模でマイノリティ出資を行なっていく。多角的に事業を広げているDMM。どんな目的でどんな会社に投資をするのか気になる点も多い。今回は最高執行責任者COOの村中悠介氏(以下、村中氏)にファンド設立の目的と、今後のビジョンについて話を伺った。
まずは村中氏のバックボーンについて話を聞いた。高卒で東京のゼネコンに入社し、3年半で辞めた後、転職サイトで見つけたDMMに入社したのが2002年。DMMが恵比寿ガーデンプレイスに移転してすぐのことだったという。
村中「DMMは当時、動画配信事業に力を入れていたのですが、まったく組織だっていない会社でした。事業部制でもなく、声がでかい人が仕事ができるという雰囲気でしたね。逆にいけば声をあげてさえいれば仕事があるし、会社を変えて行けると思ったので声をあげ続けたんです」
その後、2011年に取締役に就任するといくつもの事業を統括するポジションに。DMMの組織の特徴として事業部制で成り立っていて、横の繋がりが強いことを挙げる村中氏。これは、村中氏が役員時代に作ってきた文化だという。
村中「当時は担当役員制で12~13の事業を担当していたのですが、その事業全体を俯瞰してみていると、ある事業部で起こっていることが、他の事業部で動いていることと連携できる部分があったりして。それらをつなぎこむことで、双方にとってシナジーを生み出したり、事業を一気に加速できる。そういう工夫に意識して取り組んできました。 後は勝手に事業部長同士で連絡を取り合っていくんです。そうして結果的に、DMMは横の連携が強くなっていったと思います。今では各事業部がどんなことをしようとしているのか、ほかの事業部も把握しているので、何かあったときもすぐにサポートできるんです。DMMには40以上の事業がありますが、それぞれが連携できているのはすごい強みだと思います」
これまでも買収などマジョリティ出資を積極的に行なってきたDMM。このタイミングでファンドを組んでマイノリティ出資を行なっていくのはなぜなのか。投資先の幅を広げていくことに目的があると村中氏は語る。
村中「これまで行なってきたマジョリティ出資では、向こうもDMMグループに入りたいという気持ちもあり、いわば相思相愛の関係でした。しかし、これから出資したいと思っている会社はこれまで投資してきた企業とコミュニティも違うし、そもそも母数が違います。でもそういったところからでも面白いものが生まれるよねっていうことで、マイノリティ出資にも踏み出したんです。 会社が小さいときから近くでサポートすることで、事業に対する理解も深まりますし、深い部分で悩みを打ち明けてもらえると思っています。投資した企業がIPOをしても、バイアウトをしてもいいと思うんですけれど、その選択肢を考えているタイミングからサポートしていければと考えています。長くサポートしているからこそ、ビジネス面についても分かってあげられるし、それだけ助けてあげれることも増えると思うんです」
DMMは既にDMM GAMES VenturesというVCも設立している。GAME以外の領域でも新たにDMM VENTURESをスタートさせた意味とはなんだろうか。
村中「今回のファンドではジャンルを絞っていません。とにかくいろいろな分野の会社から問い合わせが来ればと思っています。それこそハードでもソフトでも、toBでもtoCのビジネスでも。最近は多種多様な会社から申し込みが来るんですが『なんでも受けてくれそう』っていうブランディングができてきたのは期待通りです。 そもそもDMM自体が特定のジャンルを持っていないので、投資先の分野も絞っていないんです。ただDMMには40以上もの事業があるので、どんな分野でも何かしら助けられることがありますし、シナジーが生まれる部分があると思っています。事業会社ならではの強みとして経営に関する知識や経験、機能といったところでサポートできますし、事業面での相談がしやすいと思います」
既にいくつか投資先の企業が決まっているが、気になるのはどのようなポイントを見て投資を決めているのかということ。分野を絞らずに投資する場合、会社のどんなところを見ているのだろうか。
村中「人が仕事を作っていくと思っているので、やっぱり一番見るのは『人』ですね。もちろんプロダクトありきなので、しっかりビジネスが練られていることも重要ですが、人をより重要視しています。人間性や素直さ、どんなビジョンを描いているのか、メンバーのことをどう見ているのか。一言で表せませんが、『一緒に働きたい人かどうか』ということだと思います。 プロダクトについて言うのであれば、ビジネスモデルが成り立っているか、深く広く考えられているかというところですね。それは15分、20分話しているだけで違いを感じますし、投資が決まった企業は情熱が違いましたね。もちろん採択されなかった企業もビジネスモデルを考えているんですけど、やはり最後のディテールが足りないという印象はありました」
トップティアのVCが投資しても3割の企業しかIPOできないスタートアップの世界。作り込まれたプロダクトかどうかも大事だが、本当にやり遂げられる人かどうかの方が大事だと村中氏は言う。では、どんな会社に申し込んで欲しいのかも聞いてみた。
村中「正直『なにかを良く変えたい』っていう強い想いがあれば、それ以上はないですね。やる気があるならどんなジャンルでも話を聞いてみたいです。強いていうなら若い人からの申し込みがあれば嬉しいですね。どんなに優秀な人でも失敗はあると思っているので、失敗しても次にいける環境づくりはしているつもりです。ただ25歳と35歳の失敗は違うと思っていて、若ければそれだけ無理もきくし、またチャレンジできると思うんです。もちろん35歳だからダメってわけじゃないんですけど、特に若い人にチャレンジする環境を作ってあげたいですね。 若さってそれだけで価値があると思っています。スポーツの世界でも同じスキルを持っていたら若いほど価値が高いじゃないですか。ビジネスの世界でも同じなので、若い人にこそチャレンジしてほしいですね。最近増えてる高校生起業家も良いですし、中学生でも良いと思っています」
VC事業を初めて3ヶ月で約100件ほどの問い合わせがあったという。しかし、村中氏にとっては予想よりもずっと少なかったようだ。若い人のチャレンジが少ないと感じたことに対して村中氏はこう語る。
村中「DMMはベルギーのサッカーチームを持っているんですが、日本人がいかに主張が弱いのかを感じさせられますね。世界の人たちは空気を読まずに、どんな初歩的な質問でも思ったことがあったら口に出すんです。日本人は空気を読んでから行動に移すので、その分チャンスを逃しているんじゃないかと思います。 もし起業に成功したいと思ったら、手当たり次第にVCに申し込んでみたらいいと思うんですよね。結果的に出資に至らなくても誰かにばれることもないし、恥ずかしいこともありません。フィードバックをもらえればそれだけビジネスモデルを練れるし、出資はなくても別の形でサポートしてもらえるかもしれないじゃないですか。 もし『世の中のここがおかしい』と前提や当たり前を疑うように思っているアイデアがあったら、ぜひ真っ先にDMM VENTURESに申し込みして欲しいなと思います」
実際に起業やベンチャー企業へ飛び込みたいと思っていても足踏みをしている人は多い。最後にそんな方に対するメッセージも村中氏にもらった。
村中「誰でも失敗はすると思うんですけど、一つ失敗しても次のビジネスが出せるようじゃないと、どっちにしても起業の世界では生き残っていけないと思います。 だから起業家たちは常にビジネスの種のストックをたくさん持っていますし、それを実現するために常に考え続けています。失敗した時にいちいち一喜一憂しないことが大事で、すぐに次に切り替えていくことが大事なんじゃないかと思いますね。 もちろん僕も失敗したときに反省はしますが、正直考えてもしょうがないので、失敗した分違うもので挽回しようと決めています」
執筆:鈴木光平取材・編集:BrightLogg,inc.撮影:三浦一喜