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「初代バチェラー」クラス・久保裕丈さんが、二度目の起業を決断した理由

2018-08-27
STARTUPS JOURNAL編集部
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STARTUPS JOURNAL編集部
「ユーザー本位のサービスを届けたい」一度目の起業では多くの苦しさを味わった。初代バチェラーがそれでも会社を立ち上げる理由

一度目の起業で失敗の経験をしたからこそ、再び会社をつくる決心をした起業家がいる。

家具を気軽にレンタルできるサービス・CLASを8月末からスタートさせた、株式会社クラス代表の久保裕丈だ。

久保氏は、フリーランスとして安定的な収益があり、Amazonプライム・ビデオの人気恋愛リアリティ番組・『バチェラー・ジャパン シーズン1』(以下『バチェラー』)でも活躍。フリーランスやモデルとして活躍する道もあるなか、それでももう一度起業したいと思ったのはなぜか。その想いの背景を探っていった。

■久保 裕丈(くぼ・ひろたけ)  — 株式会社クラス代表取締役社長 東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年にATカーニーに入社。2012年にミューズコー株式会社を設立。2015年同社を17億円で株式会社ミクシィに売却。
久保 裕丈(くぼ・ひろたけ) —株式会社クラス代表取締役社長東京大学大学院新領域創成科学研究科修士課程修了。2007年にATカーニーに入社。2012年にミューズコー株式会社を設立。2015年同社を17億円で株式会社ミクシィに売却。

ビジネスは自分でやった方が楽しい

ビジネスは自分でやった方が楽しい

今につながる久保氏のキャリアは、経営コンサルタントとして始まった。さまざまな業界の新規事業の創出、組織構造改革、コスト削減と、ありとあらゆることに経営コンサルタントとして携わった。豊富な経験を積み、入社数年後には自分で発想しクライアントに提案できる幅も広がったという。

久保「ただ、成果につながらないプロジェクトもあった。僕はあくまでも外部の立場であり、外から企業の課題に口を出していてもなかなか受け入れてもらえない”絵に描いた餅”で終わることもありました。。それで、絶対に自分でやった方が楽しいと思い、起業を考えるようになったんです」

久保氏はもともとファンションに興味があったこともあり、フラッシュセールがアメリカで伸びていたことに目をつけ、フラッシュセールの仕組みを使ったファッション通販サイト「MUSE & Co.」の立ち上げに踏み切った。

久保「コンサルっぽく業界分析をした結果というよりは、人との出会いがあったから起業したんですよね。僕は事業を考えるときは、人がスタートになることが多いんです。ファッションのノウハウがある仲間と、経営の知識・経験がある僕とが揃ったので、出会ってからすぐに動き出しました。会社にもその時点で辞めると伝え、1ヶ月〜1ヶ月半で立ち上げましたね」

最初の起業で痛感した「人とカネ」問題

最初の起業で痛感した「人とカネ」問題

起業後、最終的には3年でミクシィへの売却が成功した。だが、それまでには数々の苦労と失敗があったという。

久保「まずは『カネ』の問題ですね。何もしなければあと2週間でキャッシュがなくなって、潰れるなってタイミングもありました。次に『人』の問題。当時は人事制度を整備していなくて、とりあえずいい人がいたら入れていました。会社が成長しているあいだはまだよかったんですが、一度停滞をしはじめると問題が噴出して、そこでごそっとメンバーが辞めてしまったんです」

一番の原因は、自分が何でもひとりでやろうとしてしまったことだったという。

久保「コンサルタントっていろんな業種・職種の問題を解決していくから、良くも悪くもやれば大体なんでもできちゃうって感覚があったんです(笑)。僕もその例外に漏れず、自分が手を動かした方が早いと思うことが多くて、人に任せきれませんでした。誰かを信頼して一任することが怖かったんです。そんなとき、スタートから一緒に頑張ってくれていた、すごく信頼しているスタッフから飲みに誘われて。『社長つらそうだよね、もっとまわりを頼ってもいいのに』って言ってくれたんです。それで勇気を出して、メンバーに仕事を任せるようになりました」

ミクシィへの売却後は一転、フリーのコンサルタントとして自由な働き方を謳歌する。

ミクシィへの売却後は一転、フリーのコンサルタントとして自由な働き方を謳歌する。

久保「会社を売却してからは、1年くらい何もしないでいようかなって思っていました。そんなとき、まわりの人から会社の顧問として手伝ってくれないかと言われて。誘われるがままに受けていたら、いつしかフリーのコンサルになっていました。『バチェラー』もこの時期に、似たような流れでオファーがあったんです。話を聞いたときは正直『けっこうひどい番組だ』と思いましたね(笑)。でも日本でやるのは初めてだったし、自分が考えて行動できるならリスクは管理できる。認知度が上がることで、新しいことにチャレンジする際のメリットになると思い、出演を決意しました」

先の見えない真っ暗闇のなかで感じた“ワクワク感”

フリーで働いていたときは自由に使える時間があり、収入面も安定していた。また、『バチェラー』を契機とした依頼も増え、仕事の幅も広がっていた。それでも久保氏は、再び会社を立ち上げるために動き始める。

フリーで働いていたときは自由に使える時間があり、収入面も安定していた。また、『バチェラー』を契機とした依頼も増え、仕事の幅も広がっていた。それでも久保氏は、再び会社を立ち上げるために動き始める。

久保「このままフリーで働いて、アーリーリタイアだって狙えるなとも思っていました。一方で、また会社を立ち上げたいという想いもありました。先ほども話したように、1社目のときってすごく大変で、気持ちの上でも『つらい』が全体の9割5分を占めていたくらいです。でも『バチェラー』をやったとき、先の見えない真っ暗闇のなかで、怖さももちろんあるけれど、同時に“ワクワク”も強く感じたんです。会社って、経営陣の心が折れない限りは死なない。もしまた起業してはずれたとしても、他で食いつないでいけばいいやって。そんなとき、今のクラスを立ち上げるきっかけをくれた一言に出会ったんです」

クラスを立ち上げた背景には、久保氏自身が「こういうサービスがあればいいのに」と思う出来事があったからだ。

久保「僕は1〜2年単位で引っ越すんですよ。理由は明確で、更新料を払うのが嫌だから。本来は、長く住み続けてもらうために家賃を下げるシステムがあってもいいのに、逆に出て行けと言わんばかりに更新料を払わされる。礼金とかもそうで、ユーザー本位でないところがすごく嫌で。そして、引っ越すたびに家具を捨てては買って、捨てては買って、を繰り返していました。そんなときふと、家具をいつも見立ててくれる仲の良い家具屋さんに、『家は借りているのに、家具を買うからおかしいんだよね』と言われたんです。それが、今のクラスのモデルにつながりました」

それからというもの、人に会うたびに「こんなサービス、どう思う?」と聞いてニーズを探っていった。収入も年齢もばらばらな人たちから返ってきた反応はすごくよかったという。

それからというもの、人に会うたびに「こんなサービス、どう思う?」と聞いてニーズを探っていった。収入も年齢もばらばらな人たちから返ってきた反応はすごくよかったという。

久保「レンタルサービスは、まずは仕入れをして在庫を抱えなきゃいけないからリスクが大きいんです。しかもまだ誰もやったことのないサービスだから、うまくいくかは蓋を開けてみないとわからない。それでも行こう、と決めたのは、このサービスが広がったら、熱狂的に喜んでくれるユーザーの姿が目に浮かんだからです」

クラスでは、例えば椅子だと月500円から借りることができる。配送料・保険料・設置代もそのなかに含まれているというのだから驚きだ。

久保クラスのビジョンは『暮らすを自由に、軽やかに』。事業の意思決定をするときは、それがこのビジョンに沿っているかを何度も確認してきました。ユーザー本位のサービスであり続けたいのは、根っこの部分に、もっと多くの人が自由に、軽やかに生きられる世界を目指したいという想いがあるからです」

それはこれまで久保氏自身が、自由に生きてこられたときの方が幸せだったという実感があるからこそ、生まれてきた想いだ。

久保「フリーで働いていたときがけっこう心地よかった、というのは大きいですね。人っていろんなタイプがいるじゃないですか。朝がすごく苦手って人もいるし、僕みたいに、夕方から深夜にかけて働きたい人もいる。人ってある程度、自由に生きている方が生産性も満足度も上がるという実感がありました。自由について語るとき、資産は外せません。家具もそうですが、家や車といった資産を持っていると、いざ動きたいと思ったときに、なかなか軽やかに動けないことがあります。だからこそ僕は、ゆくゆくは家具にとどまらず、車や家電、そして住宅なども、気軽に借りられるようなサービスにしていきたいと考えています」

新しいことに対しては、深く考えてしまうと飛び込めない

一度目の起業での経験、またフリー時代の自由な働き方から、久保氏はクラスを経営するにあたっては遊びを大事にするようになったという。

一度目の起業での経験、またフリー時代の自由な働き方から、久保氏はクラスを経営するにあたっては遊びを大事にするようになったという。

久保「自分で起業するときは、気持ちが折れないことが一番大事。ひたすら死ぬ気で仕事しても、どうにもならないときがあります。スタートアップって、ひたすらゴリゴリ、マッチョに働くイメージがありますが、工夫してやればもっと遊びながら働けると思うんです。だから僕は、遊ぶことを大切にしています。働く時間をあえて意識的に制限し、その分、人と会ったり身体を動かしたりしています。ひたすらアポの連続だと、発想もインプットもできませんから。今日は仕事を6時間で終わらせようってときと、一日中働こうってときって、結局パフォーマンスは変わらないんですよ」

これまで二度の起業にフリーランス、そしてバチェラーという新たな仕事と軽やかに挑戦し続けてこられたのは、良い意味で「深く考えなかった」からだとその理由を語る。

久保「新しいことに挑戦するときは、深く考えちゃうと飛び込めない。だからとりあえずやってみるしかない。もちろんリスクはあるでしょう。でも、まずは起業の先輩というか、信頼できる人2〜3人見つけて、何で失敗したか聞くといいと思います。これは自分が一通り失敗したから思いますが、失敗には必ず型がありますから。まあそれでもやっぱりつまずくと思います(笑)。そのときには、『あーこれ言われたな』って納得して、次に活かせばいいんです。僕も一度目の起業から学んだからこそ、今のクラスがありますから」

執筆:菅原 沙妃 取材・編集:Brightlogg,inc. 撮影:三浦一喜

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