2020年10月の想定時価総額ランキングでは、2020年9月前回のランキングで7位だった、人工合成クモ糸「クモノス(QMONOS)」の開発に取り組むSpiberが6位へ浮上。想定時価総額を1,007億円から77億円増加させ、1,084億円となっている。
Spiberは、慶應義塾大学大学院でバイオインフォマティクスを専攻していた関山和秀氏によって2007年に設立された、山形県鶴岡市に拠点を置くバイオベンチャーだ。同社は、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」に採択されており、枯渇資源に頼らず環境性に優れた人工タンパク質素材を通じて、地球規模の課題解決に貢献している。2020年10月6日には、米国の穀物メジャーのArcher Daniels Midland Companyと資本業務提携を発表し、米国での量産を進めていく方針だ。
また、2020年9月前回のランキングで想定時価総額444億円だった、テックスタートアップのプレイドが7億円の増加させ、451億円に上昇していた。
プレイドは、デジタルマーケティング領域でCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を運営している。「KARTE」および「KARTE for App」はオンライン上での人の行動データをリアルタイムに解析・可視化し、ユーザ一一人ひとりに対して最適なコミュニケーションをとることが可能なプラットフォームとなっている。
STARTUP DBの保有する登記簿の情報によると、2019年11月には、米Googleからおよそ16億2,200万円の出資を受けており、日本では2社目となるGoogleから出資された日本企業として大きな話題を呼んだ。
2020年8月には、オンラインチャットを中心にFAQ接客やチャットボットなど、オンラインサポートに関わる「KARTE」の機能を提供するパッケージサービス「いますぐ始めるKARTEオンラインチャット」の導入支援で、トランスコスモスとの協業を発表。今後もカスタマーサポート領域におけるオンラインチャットの導入支援などで、トランスコスモスと継続的に協業していく予定だという。
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今回のランキングで順位を上昇させたSpiberは、トップのMobility Technologiesに続き、設立以降の累計資金調達金額では2番手となっている。
これまでSpiberは、およそ355.8億円を調達している。2018年9月には、海外需要開拓にフォーカスした投資を行うクールジャパン機構より30億円、2019年12月には、アメリカ発の大豆油・ヒマワリ油などの穀物製品加工・販売を展開するArcher Daniels Midland Companyから43億7,700万円の大型資金調達を受けた。
直近では、2020年5月に繊維商社の豊島を引受先として第三者割当増資を実施し、同時に紡績糸とテキスタイル開発に関する共同研究契約を締結したことも記憶に新しい。この共同研究契約の締結により両社はナレッジとリソースを相互に活用。ファッションを含む幅広いライフスタイル分野において、Spiberが独自に開発した「ブリュード・プロテイン」をはじめとする構造タンパク質繊維の用途の多様化と、普及拡大に向けた開発に尽力している。
また、想定時価総額ランキングで2位となっているクリーンプラネットは、累計資金調達金額14.4億円と最も少ない。過去の出資で増資の引き受け先が明らかになっている企業は、三浦工業と三菱地所だ。
同社が主力事業として力を入れているのが、東北大学と産学連携体制で研究を行っている「新水素エネルギー」である。従来の水素エネルギーに比べてエネルギー出力の効率がよく、CO2も全く排出しないまさにクリーンなエネルギー。「安全、安定、安価」なエネルギー源を創出し、世界全体の課題を解決することに期待がかかる。
カテゴリー別にみると、先月と同様に環境・エネルギーと金融領域が最も多く、4社ずつランクインしており、自動車領域が3社でこれらに続く。
ランキングに変動のあった、SpiberとTRIPLE-1が製造領域のユニコーン企業として分類されている。
TRIPLE-1は、世界初の7nmプロセス技術を使用した、国産ビットコイン用マイニングASICチップ「KAMIKAZE」の開発を手掛けるスタートアップだ。「KAMIKAZE」は従来のチップに比べ50%以上の省電力化と処理速度4倍という、環境負荷を大きく低減させながらの高性能化を実現。
同社は、2020年8月22日に、東洋経済誌『すごいベンチャー100・2020年最新版』に、ユニコーン企業として選出された。
STARTUP DBでは次月以降も引き続き、想定時価総額ランキングと主要トピックに関する記事をリリースしていく。