サッカー日本代表として活躍した本田圭佑氏は、エンジェル投資家としての顔も併せ持つ。ユニコーン企業の10倍にあたる時価総額100億ドルの未上場企業「デカコーン」の創出を目指すとし、2023年2月には投資件数が180に、IPO実績が3社に到達したとTwitterで公表した。本田氏に認められたスタートアップの顔ぶれは。本田氏が率いるKSK Angel Fundが2020年からの直近3年間に投資したスタートアップを紹介する(2019年以前の投資先はこちらの記事から)。
電動キックボードや電動アシスト自転車などのシェアリング事業を手がける。レンタル・返却のできる「ポート」は、東京や大阪府以外にも、京都市・横浜市・宇都宮市・神戸市にも展開している。本田氏は2020年4月に発表された累計4億500万円の調達に参加している。同社はその後、2023年5月に45億円の資金調達を発表している。
アプリをダウンロードせずに遊べる「インスタントプレイゲーム」を開発する。発表によると、この分野に特化したスタートアップは同社が世界で初めて。2021年4月には、本田氏が創業した企業で、貧困による教育格差の課題解決を目指すNowDoとの業務提携を発表。両者が取り組む領域である「ゲーム」と「学び」を融合させた事業開発に取り組むとしていた。同社の投資には、本田氏が携わる別のファンド・Dreamers VCも参加している。
筑波大学発の宇宙スタートアップ。衛星間光通信という技術を活用し、宇宙空間での次世代通信システムの構築を目指す。地球観測や宇宙ステーションとのデータのやりとりなどに活用できるという。2021年4月19日にKSK Angel Fund、宇宙フロンティアファンド、SMBCベンチャーキャピタルの運営するファンドから4億円を調達している。本田氏は「今の時点で可能性が低いなんて思うことは当たり前。それでもいつの時代でもそんなわずかな可能性を信じて行動し続けた人だけが夢を実現させてきたんです」とコメントしている。
ダンスバトル型ショートムービーSNS「DORM」やHIPHOP情報メディアなどを手がける。DORMは比較的簡単に動画を作成でき、投げ銭機能などで収益化も可能だという。本田氏はシードラウンドでの出資に参加しており、「TikTokを研究し尽くして生み出した革新的なエンタメプラットフォーム」と評価している。同社はクリエイター支援のほかにweb制作事業も展開する。
オンライン研修コンテンツなどを手がける。派遣スタッフが自ら学ぶことのできる専用eラーニングシステム「派遣のミカタ」や、コンプラ研修・パワハラ防止対策などを網羅した「playse.(プレース)」などを展開する。本田氏は総額8億2,000万円の調達に参加。創業者の田島智也・CEOを「落ち着きがありながら自信と野心に満ち溢れている」と高く評価したことを明かしている。
IoTを活用した見守りサービスを展開する。専用アプリをインストールした人や提携タクシーなどを通じて子どもや高齢者ら見守り対象の位置情報履歴を取得し、保護者へ通知する。本田氏は出資の理由について「将来の日本を支える子供たちの安全を守る活動が、将来の世代を育てていく我々大人たちの果たすべき仕事だと思ったから」とコメントしている。
「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つお店」をつなぐシェアリングサービスを提供する。オンライン上で預け場所を予約でき、公式サイトによると、カフェ・ゲストハウス・コワーキングスペース・シェアオフィス・カラオケ店・漫画喫茶・着物レンタル店・神社・東京駅構内などの空きスペースを利用できる。本田氏は複数回、投資を実行していて、2023年6月に発表されたシリーズBラウンドにも参加している。
NFT(非代替性トークン)検索プラットフォーム「NFT iD」やブロックチェーンゲームの開発などを手がけるWeb3スタートアップ。NFTは改ざんが困難という特性を持ち、同社は将来的に「個人の社会的な価値を保証する身分証」のような機能を持つNFT発行サービスを作りたいとしている。本田氏は同社について「スタートアップってこうあるべきなんじゃないかって雰囲気を持ってるチーム」と評価している。
日本酒のテイスティング(試飲)キットをアメリカで展開するスタートアップ。同社は会員向けにミニボトル入りのテイスティングキットを送る。詳細な商品説明が書かれたカードや蔵元のインタビュービデオなども添え消費者体験を高めている。2022年4月の発表によると、サービス開始から3年間で20万本以上の日本酒を販売したという。
企業向けNFT支援事業を展開する。Web3研修やNFTコレクションを使用した広告プランニングなどに幅広く対応する。本田氏も参加した6,666体限定のコレクション「FLOWERLOLITA」を手がけるなど、NFTプロジェクトの運営経験が強みだという。
コミュニケーションアプリ・LINEを通じてハイヤーを配車できるサービスを展開する。2022年5月にはKSK Angel Fundから単独で1億円を超える資金調達を実施したと発表。アメリカのテック企業・Uber日本法人の第1号社員という経歴の創業者のもと開発されたサービスで、2021年の1年間で売上は5倍以上に増加したという。本田氏は「飛躍的な事業成長を遂げられていて、確実に日本のスタートアップの成長スピードの基準を引き上げている」とコメントしている。
本田圭佑氏(左)とライトマークスの殿崎俊太郎・代表取締役社長(右) プレスリリースより
AIを活用した採用アプリ「Hello Boss」を展開する。独自開発のAIにより企業と求職者をマッチングできるのが特徴で、2023年2月のリリースから1ヶ月でユーザー数10,000人を達成した。Open AI社のGPT-4(解説)も組み込んでいて、求職者の自己PR文章の作成などに利用できる。本田氏は総額8,800万円のシードラウンドに参加している。
TikTokなどで使われる縦型動画のクリエイティブ制作やコンサルティングを手がける。TikTokをAIを活用して次々と視聴者に動画を推薦する仕組みだが、同社はこのアルゴリズムに対する知見に自信を持つ。本田氏は同社によるスポーツチームのSNSアカウントの運営実績を評価。「個人だけでなくスポーツチームも上手くSNSを活用し始めてるなという印象を受けるので、タイミングもピッタリ」としている。
知的財産(IP)のDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げ、特許明細書作成のサポートシステムや特許事務所業務のDX支援を手がけるスタートアップ。2022年11月には、シードラウンドとして5,000万円の調達を発表。本田氏を含む複数の投資家が参加している。
電動二輪などのモビリティをアジア全域で販売する。2022年4月には国内でEV充電インフラ事業に参入した。同社は充電設備だけでなく、充電時間の設定や決済ができる専用アプリ、それに充電設備の設置工事などを幅広くカバーする。2023年2月には本田氏からの調達を発表。その後6月にはシリーズCラウンドとして総額40億円の調達を発表した。
AIで為替変動リスクを予測するサービスを提供するフィンテック企業。同社の「トレーダム」は、400を超える経済指標や専門家・機関投資家の見通しをAIに学習させ開発したもので、「為替の専門チームを持たない企業でも適切な為替リスクコントロールができるクラウドサービス」と謳う。本田氏からの出資は2023年3月9日に発表されている。本田氏は上記のスタートアップに出資したファンドのほかにも、「世界中から選ばれた学生投資家と共に、世界最高峰の学生起業家に出資する」と掲げたKSK Mafiaを創設している。また、6月末に京都市で開かれたIVS(インフィニティ・ベンチャーズ・サミット)では新たなファンドの立ち上げに言及している。
KSK Mafia 立ち上げ時のプレスリリースより