2021年1-4月の国内スタートアップ資金調達金額ランキングでは、QRコードマルチ決済ゲートウェイ「StarPay」を運営するネットスターズが66億円の調達を行い、ランキングの3位に躍り出た。また、TBM、INFORICH、ファンズ、スタディスト、ZEALS、FSXが10億円を超える資金調達を新たに実施し、新規ランクイン企業は7社となった。
2009年2月に設立されたネットスターズは、国内外の主要なQRコード決済を一括導入できるマルチ決済ゲートウェイ「StarPay」を提供。同サービスは、2021年4月時点で国内に28万箇所以上設置されており、PayPay、LINE Pay、AliPay、WeChatPay、VIAなどを含む37の決済ブランドが使用可能だ。
2021年4月には、グローバル資産運用会社KKRが運用するファンドからの40億円の拠出をはじめ、LUN Partnersからの追加出資、Susquehanna International Groupから累計で66億円を調達。
今後は、「StarPay」の日本におけるQR決済の加盟店の獲得増を目指すと共に、2021年中に海外金融機関と連携をして海外でのマルチ決済ゲートウェイサービス(注1)の提供を開始する予定だ。また、ミニアプリ開発プラットフォーム「StarPay-mini」をはじめとした各種サービスの拡充を図り、加盟店の新規顧客獲得とリテンションへのサポートを行う方針である。
同社は、過去にLUN Partners、SCSK、ティーガイア、伊藤忠商事、日本郵政キャピタル、ぐるなび、LINE Pay、エヌ・ティ・ティ・ベトナム、伊藤忠テクノソリューションズと資本提携を締結している。2020年5月に行われたLUN Partnersとの資本業務提携では、同社の持つグローバルネットワークを活用し、海外での新規顧客の獲得や商圏の拡大を目的としていた。
注1:複数のQRコード決済(マルチ決済)と複数の共通ポイント(マルチポイント)をまとめて導入できるゲートウェイサービス
TBMは、炭酸カルシウムなどの無機物を主原料とする新素材「LIMEX」の開発・製造・販売を手がける。2021年4月、南都銀行を幹事行に、地方銀行10行によるシンジケートローンおよび政府系金融機関からの資本性ローンの協調融資により総額36億2,000万円の長期融資契約を締結し、6位にランクイン。
同月には、東京建物、ブリヂストン、神奈川県葉山町と連携し、プラスチック資源循環に向けて、オフィスや一般家庭から排出される廃プラスチックのマテリアルリサイクルを推進。また、Bioworks、AnyMind Groupとパートナーシップを組み、インフルエンサーとのコラボレーション製品をECサイト「ZAIMA」で展開するなど、持続可能な循環型イノベーションを目指した取り組みを進めている。
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モバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」を提供するINFORICHは、2021年4月16日に地銀系VC等から23億円の資金調達を発表した。引受先は、ひろぎんキャピタルパートナーズ、ピー・アンド・イー・ディレクションズ、ベンチャーラボインベストメント、南都キャピタルパートナーズ、日本国際経済開発機構などが参画。これまでの累計資金調達額は、97億7,300万円となった。
「ChargeSPOT」は、年内50,000台、2022年に80,000台、2023年に100,000台とバッテリースタンドの設置を拡大し、日常生活には必要不可欠な生活インフラ化を目指す。また、アプリをDLしなくても同サービスを手軽に利用できるよう、キャリア系決済アプリとのミニプログラム連携なども行なう予定だ。
レンタル方法はアプリでバッテリースタンドのQRコードをスキャンするだけの簡単操作。2018年4月のローンチからわずか1年で日本全国47都道府県に広がり、グローバルでも香港、タイ、台湾とエリアを拡大中である。
今月の資金調達金額ランキングのランクイン企業の設立日と、設立からの累計調達金額は以下の通りである。
トップ20にランクインしている企業の中で、これまでの累計資金調達金額がもっとも多いのはPaidyで、累計634億8,500万円を調達している。次いで、ディーカレット、TBMが名を連ねる。
また、設立5年以内のスタートアップは、ディーカレット、Legal Force、日本共創プラットフォーム、ファンズ、GITAI Japanの5社で、全社が20億円以上を調達している。
2016年11月に設立されたファンズは、貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」の運営を手がける。同サービスは、個人が1円単位から企業への貸付投資を行えるオンラインプラットフォームだ。2021年3月末時点で、上場企業を中心とした29社が組成する73本の貸付ファンドを募集し、分配遅延・貸し倒れは0件となっており、上場企業利用社数国内No.1(注2)の実績を誇る。
2021年4月27日には、既存株主のグローバル・ブレイン、B Dash Ventures、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、AGキャピタル、新規でANRI、日本郵政キャピタル、メルペイ等を引受先としたシリーズCラウンドにおける第三者割当増資により、総額約20億円の資金調達を実施。調達した資金は、より一層のファンド募集拡大、サービス拡充、コンプライアンス体制強化を目指し、人員体制の増強および認知向上を目的としたマーケティング活動などに充当する方針。
また、過去に同社はビジネスの共同開発を目的とした伊藤忠商事との戦略事業パートナーシップ協定の契約、auカブコム証券、電通、三井住友信託銀行との資本業務提携の締結なども行っている。2020年10月15日に発表された三井住友信託銀行との締結は、今後、同行の法人顧客に対するESG関連のファンド組成支援を始め複数のテーマでの連携を推進するものだという。
同社は、サイバーエージェントに入社後、2007年にマーケティング支援事業を行う企業を創業し、2012年上場企業に売却した経歴を持つ藤田雄一郎氏が代表を務める。
注2:2021年4月末時点 「貸付型クラウドファンディング業界における上場企業利用率」ファンズ調べ
STARTUP DBでは次月以降も引き続き、資金調達ランキングと主要トピックに関する記事リリースしていく。