分かりやすい用語解説

CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とは?VCとの違い、「二人組合」のメリットも具体的に解説【ゼロから分かる用語解説】

2023-06-06
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

「ゼロから分かる スタートアップ用語解説」は、これからスタートアップについて詳しく知りたい人たちを対象に、基礎的な内容を分かりやすくお伝えします。今回はスタートアップへの資金の出し手として存在感の高まる「CVC」について解説していきます。

この記事で分かること:
・CVCとは
・二人組合とは 実例で見るメリット
・独自集計 2022年に積極的に投資したCVCは

CVCとは

CVCとは「コーポレート・ベンチャー・キャピタル」の略です。事業会社が、自社の資本をスタートアップに投資するための組織を指します。

スタートアップに成長資金を投入するプレイヤーは多岐に渡ります。投資を専門とする組織のVC(ベンチャーキャピタル)や創業間もない企業を対象にするエンジェル投資家、それに公的資金も盛んに活用されています。

このうちCVCは、事業会社が大元ということもあり、自社との相乗効果(シナジー)を見据えて投資を実行することが多いとされています。

VCは一般的に、投資したスタートアップが成長しIPO(新規株式公開)やM&A(合併・買収)などのイグジットにたどり着くことを目指します。スタートアップの株価が高まったタイミングで売却することで利益を得ます。これを「キャピタル・ゲイン」と言います。

一方で、CVCによる投資は必ずしもこのキャピタル・ゲインが目的とは言えません。出資先のスタートアップの持つ技術やビジネスモデルなどと連携することで、自社事業にプラスの効果が出ることを見込みます。

日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)が2018年に実施した調査によると、国内のCVCのうち投資の目的を「主に戦略的なリターン」としたのは52%。「金銭的リターンと戦略的リターンの両方」は39%で、CVC投資のほとんどが事業戦略へのシナジーを見込んでいることが分かります。「主に金銭的なリターン」は9%にとどまりました。

スタートアップにとっても、CVCから出資を受けるメリットは小さくありません。事業会社との関係性を強化できるのはもちろん、技術開発や実証のためのアセット(資産)の提供を受けたり、販路開拓に向けたサポートをしてくれたりするなどの効果が期待できます。ブランド力のある事業会社のCVCから評価されることで、スタートアップの信用が向上する可能性もあるでしょう。

事業会社がスタートアップの成長力を取り込むアクションとして、M&Aも挙げられます。M&Aは、経営権を掌握するまで株式を買い取る必要がありますから、その分多額の資金を用意する必要があります。一方でCVCによる出資では資金の量が異なります。経営の舵取りは引き続き現経営陣に任せつつ、自社とのシナジーを模索していくことになります。

二人組合とは 実例で見るメリット

CVCによるスタートアップ投資には複数のパターンがあります。

一つは、事業会社が社内に投資部門を作ったり、投資を目的とした子会社を設立したりするケースです。資金は事業会社から供給され、自社のビジネスの市場拡大や新規事業につながるなど、戦略面のリターンを考慮して投資先が決定されていきます。

この場合、ファンドの運用や投資実行などを担える人材を社内で育成するか、外部から採用する必要が出てきます。これに対して、資金は自社で供給しつつ、ファンド運営は専門職であるVCに任せるケースもあります。これを「二人(ににん)組合」形式と呼びます。

実際に二人組合を活用した事例を見てみましょう。準大手ゼネコンの東急建設は2022年2月8日に、独立系VCのグローバル・ブレインとの間で二人組合形式のCVCを設立しています。

東急建設は、従来型の自社CVCの課題についてこう指摘しています。

「投資先の発掘、投資判断デューデリジェンスやファンド運営に手間が掛かり、スピードの鈍化や投資先企業との協業によるシナジー創出に十分なリソースを投入できないという課題があります」

つまり、自社だけではファンド運営や投資活動に十分な知見を持てないことを問題視していたのです。これに対し、スタートアップ投資を専門とするグローバル・ブレインと組むことで「投資に係る一連の手続きをVCに委託することでノウハウの不足を補完」できるメリットが生まれると強調しています。

独自集計 2022年に積極的に投資したCVCリスト

国内では、どんなCVCが盛んに投資活動を行っているのでしょうか。STARTUP DBに収録されているデータをもとに紐解いていきます。

2022年の1年間で、投資したスタートアップが最も多かったのはディープコアの19社です。ディープコアはソフトバンクグループの100%子会社で、「AI特化型」を掲げているのが特徴です。

ディープコアは2023年も積極的な投資を続けています。4月にはオンライン賃貸プラットフォームを運営するエアドアに、投資のまとめ役とも言える「リード投資家」として出資しています。

投資社数が多いCVCでは、DGインキュベーションデジタルガレージ)が18社、サイバーエージェント・キャピタルサイバーエージェント)とココナラスキルパートナーズココナラ)がそれぞれ16社と続いています。

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