ソフトバンクやメルカリといった企業が注目を集めた2018年のIPO市場。近年のIPO企業数の増加は続き、日本取引所グループHPによると、2018年にIPOした企業数は97社に上った。 今回は2018年IPO市場においてキャピタルゲインを得た投資家をその金額に基づいてランキング化した。本記事はIPOを行った各企業の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」に掲載されている株主一覧に従って、保有株式数と初値を掛け合わせた簡易的な数字を投資家ごとに合計しランキング化した。また対象企業をベンチャーキャピタル(以下、VC)に限らず、エクイティ投資やその他投資事業を行う企業も含めて計算した。細かな数字や順位はあくまで目安としてみていただきたい。
投資先:メルカリ事業にインベストメント領域を持つ同社が1位に輝いた。2018年にIPOした出資先企業はメルカリ1社のみだったが、同社の約10%の株式を保有していたため大きくその金額を伸ばした。ユナイテッドはメルカリが設立してから半年後となる、2013年8月という非常に早い段階で2億円以上の資金を提供していた。また同時にメルカリの上場規模の大きさを改めて感じる結果となった。
投資先:ビープラッツ / メルカリ日本発の独立系VCのグロービス・キャピタル・パートナーズが第2位。同社もメルカリの株式を多く保有していたこと、またビープラッツが公開価格2200円に対して初値で10000円を記録したことが上位ランクインの要因となった。
投資先:信和 / キュービーネットホールディングス / コンヴァノ非上場・上場企業へのエクイティ投資を行っているインテグラル。投資先企業はベンチャー等に絞ってはいないが、3月、4月と続けて3社IPOしたことで大きな収益を得ることに成功した。今回はインテグラルグループとして、子会社のインテグラルパートナーズとの合計額で表示。
投資先:ラクスル / メルカリ / ポートこれまで50社以上をEXITに導いた実績を持つ老舗VCグローバル・ブレインが第4位。ラクスル、メルカリに大型の投資を行い、また年末には「キャリアパーク!」を運営するポートも上場を果たした。
投資先:ラクスル / メルカリ / ワールド多様な金融手法を持つ日本政策投資銀行が第5位。政府系金融機関でベンチャー企業とは縁遠く感じるかもしれないが、ベンチャー投資も積極的に取り組んでいる。ワールドに対しては主に優先株等への投資を行うメザニンファンドより資金を供給した。
投資先:ラクスル / メルカリ日米でのベンチャー投資を行うWiLが6位にランクイン。国内の大手企業とベンチャー企業の間に入り、関係性を構築することやベンチャー企業の海外展開支援等も行っている特徴がある。
投資先:メルカリ日本やアジア圏のベンチャー企業に積極的に投資を行っており、代表を務める衛藤バタラ氏はmixiのCTOを務めた経験を持つ。昨年のIPOはメルカリのみだったが7位にランクインした。
投資先:アジャイルメディア・ネットワーク / HEROZ / ベストワンドットコムモバイル・インターネット分野を投資対象とするVCのモバイル・インターネットキャピタルが8位にランクイン。投資先の1HEROZは、騰落率988%となる初値49000円を記録し話題となった。
投資先:ラクスル / メルカリ伊藤忠商事の子会社でVC事業を担う伊藤忠テクノロジーベンチャーズが第9位。 他のCVCを抑え見事TOP10入りを果たした。
投資先:ラクスル / ライトアップマーケティングやシナジー投資事業を営むオプトが第10位。ラクスルだけでなくライトアップにも大きく投資していたことで大きな収益を獲得した。
あらためてランキングをまとめると以上のようになる。年間を通して驚くべきことは、TOP10に入った8の投資家の投資先企業が前期にしかIPOをしていない点だ。IPOした企業数に前後期でそこまで大きな差はなかったので、VCをはじめとする企業が注目するようなメルカリやラクスルといったIPO企業が前期に集中していたことがわかる。今回は10位までしか掲載しなかったが、ジャフコや東京大学エッジキャピタルといった有力なVCも多くの収益を獲得していた。またランキングからはVCだけでなく、多様な企業が積極的にベンチャー企業に投資を行っていることがわかる。自身の新たなキャリアを築く、ベンチャーやスタートアップに挑戦するといった人は、チャレンジする企業がどの投資家から出資を受けているのか、ひとつ着目するとよいだろう。