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【2023年上半期】資金調達総額は約4,006億円、前年から3割ほど減る結果に。大学発スタートアップは引き続き躍進(速報値)

2023-07-28
高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者
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高橋史弥 / STARTUP DBアナリスト・編集者

2023年1月から6月末までの上半期に国内スタートアップが調達した資金の総額は4,006億4,100万円と、前の年の同じ時期よりも3割程度減少したことがSTARTUP DBの調査で分かった。

この数字は速報値であり、今後登記簿の更新などに伴って増加していくが、対前年比で一定程度のマイナスは避けられない勢い。アメリカの中央銀行を中心とした相次ぐ利上げが各国に波及するなか、日本のスタートアップエコシステムは成長を続けてきたが、23年上半期になって影響が可視化された可能性がある。

速報値でおよそ35%のマイナス 4,000億円台は20年以来

2023年上半期の資金調達金額は4,006億4,100万円だった。これは新株を発行するエクイティファイナンス(用語解説)だけでなく、融資などのデットファイナンス(用語解説)、それにクラウドファンディングによる調達などの総額だ。

あくまで速報値であり、今後一定程度の増加が見込まれるが、現時点では2022年上半期(6,178億円)から2,000億円以上減らしている。率にしておよそ35%のマイナスだ。半期の調達額が4,000億円台となるのは2020年以来。調達を実施した社数も300社程度減っている。

注 1:2023年7月10日時点 注 2: 投資実行日不詳の場合は、発表日時に基づく 注 3: 一部、融資や社債での調達、関連会社からの調達を含む 注 4: 今後、各社の登記簿情報の更新にあわせ、合計資金調達金額・資金調達実施社数が増加する可能性がある。 出所:STARTUP DB

国内のエコシステムをめぐっては、アメリカの中央銀行による利上げなどを背景に、2022年ごろから資金調達環境の冷え込みが指摘されてきた。その一方で2022年(通年)は調達総額で1兆1,000億円を超える水準を保っていて、アメリカなどとは一線を画す傾向とみられていた。2023年上半期は一転して調達額・社数が低下していて、ここにきてマクロ環境の影響が可視化された可能性がある。

エクイティファイナンスによる調達金額が継続して下がっている。デットファイナンス・ベンチャーデット(新株予約権付社債・転換社債など)の調達を含む「その他」も金額は低下しているが、実施社数は前年と同水準を保っている。

市況冷え込むも...大学発スタートアップは成長見せる

全体の調達金額・実施社数とは異なる傾向を示しているのが大学発スタートアップだ。2023年上半期の調達金額は384億8,000万円で、前の年の同じ時期から37億円ほど増加した。実施社数は87社とわずかに減った。

注 1:2023年7月10日時点 注 2: 投資実行日不詳の場合は、発表日時に基づく 注 3: 一部、融資や社債での調達、関連会社からの調達を含む 注 4: 今後、各社の登記簿情報の更新にあわせ、合計資金調達金額・資金調達実施社数が増加する可能性がある。 出所:STARTUP DB

大学発のスタートアップには研究成果を事業化しようとするものが数多くあり、その独自性やグローバル市場を見据えられる点などから投資家らも高い期待を寄せているとみられる。

上半期では、京都大学発の核融合スタートアップ・京都フュージョニアリングがシリーズCで105億円の調達を実施している。政府系ファンドのJICベンチャー・グロース・インベストメンツがリード投資家を務めていて、エネルギー系の事業会社やCVC(用語解説)、それに独立系・金融系VCなど幅広い属性の投資家が出資している。そのほか、脱炭素につながる事業や医療系のスタートアップも成長資金を獲得している。

大学の研究成果の事業化は、国のスタートアップ育成5ヵ年計画にも盛り込まれた重点領域の一つ。産学官が注力する領域として、市況が冷え込むなかにおいても成長を続けているとみられる。

エコシステムの今を徹底分析 レポートは8月3日公開

STARTUP DBは、「2023年上半期投資動向レポート」を2023年8月3日(木曜日)に公表する。国内スタートアップエコシステム全体の資金調達トレンドから、エクイティなど調達手法別の傾向、それにIPO・M&Aなどのイグジット状況などを俯瞰し、エコシステムの今を数字とともに浮き彫りにしていく。

また、調達環境に変化が起きるなかでも成長を続ける大学発スタートアップについても分析を実施。資金調達を重ね、評価額を上昇させたスタートアップを網羅している。

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最前線で活躍するVCが解説 投資動向セミナー8月24日開催

ベンチャーキャピタリストとしてエコシステムの最前線で活躍する専門家を招き、2023年上半期の投資動向について解説を聞くセミナーを、8月24日(木曜日)にオンラインで開催する。市況の冷え込みが続くなか、国内スタートアップの資金調達はどのような変遷をたどったのか。独自調査による最新レポートをグラフィックで視覚化しながら、スタートアップの今と下半期の展望を読み解いていく。

▼解説セミナーは、以下からお申し込みいただけます。
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▼このような方におすすめ
・CVCなど、事業会社で投資担当をしている
・2023年上半期に大型資金調達をした企業を知りたい
・国内の最新スタートアップ動向を知りたい
・ファンド、投資家、産学連携など成長産業における最新動向を網羅したい
・今、勢いのあるスタートアップを見つけたい
・IPOやM&A、事業提携などの傾向を知って、自社に活用したい

▼開催概要開催日時:2023年8月24日(木)12:00~13:30
参加料:無料
参加方法:オンライン
視聴主催:フォースタートアップス株式会社(STARTUP DB)
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